明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.

2013年12月20日金曜日

暁鐘成愛犬皓の碑

館皓寶獣土碑または士碑と見えたが、どうも腑に落ちない。良く調べて見るとこの文字は之である。
館のシロ宝獣の碑と読むのが正解である。  

2013年12月17日火曜日

狗賊について

狗賊について
 『暁鐘成子たまたま愛畜するところの狗有り。名は皓。是歳秋八月廿一日暁天、かきねをこえ露臥す。乍ちにして狗賊の害する所と為る。主人悲哀に堪へず・・・云々』暁鐘成の愛犬は狗賊に害せられたので遺骨を葬りその霊を弔うとある。その事を記した碑は牧岡公園暗峠入口・日蓮宗梅龍山勧乗院にある。
 狗賊とはどのような賊徒であろうか?まず最初に考えられるのは犬撮り、犬釣り、犬盗人の類である。しかし、賊の捕獲した犬は犬追物の的とされるから、傷のない生きた犬でなければならない。しかも、賊徒・河原者の犬捕獲道具は竹筒に紐、袋であるから、屋敷の外で寝ていて突然殺されると言う事はない。賊徒の目的は単に犬を撲殺することか、その死体の皮や肉など捕獲するためであったと考えられる。
 寺島良安の「和漢三才図会」では、牛馬猫犬を屠り、皮を剥ぐのを職業としているのは昔の餌取で旃多羅、屠児(えとり・えた)とする。剥いだ牛馬猫犬の皮の用途は武具、太鼓、楽器、敷物等と考えられる。また、この書には犬肉の効能についても記されているから犬肉も貴重な蛋白源になっていたことは確かである。
 しかし、皓を襲った賊徒は死体をそのままにしているから、これは明らかに犬を撲殺することのみがその目的である。既に近世には狂犬病が存在し、流行時には野犬の撲殺が行われた記録が各地に見られる。(はしか犬・長州藩の犬取りについて。長州藩部落解放史研究、布引敏雄)明治十二年七月一日東京曙新聞に『狂犬撲殺の事は下谷練塀町三十一番地当府士族村上弘重、同車坂町二十一番地橋本義年の二名へ委託の鑑札を下附』とある。また、明治十六年五月二十六日「畜犬取締規則」では警視総監は『狂暴の犬は撲殺を許可』している。戦前の野犬撲殺業者は犬釣りや犬ころしとも呼ばれたと、「広辞苑」等にも記載があるが、昭和二十六年以前の旧家畜伝染病予防法での屠殺処分方法は殆どが撲殺である。
 暁鐘成の愛犬・皓は暗峠で主人を守って命を落としたとの説があるが、真相はやはり碑文に有る通り狗賊にやられたと考えるのが妥当である。


2013年11月29日金曜日

2013年11月2日土曜日

牛の肥育


現在の我が国の牛肉生産量は年間35万トンで、この内四割が肉用種の和牛肉、六割が乳用種と交雑種で、これらは国産牛肉と表示される。肉牛の肥育は10ヶ月の仔牛を22ヶ月肥育して32ヶ月で出荷する。乳牛去勢と交雑種は7ヶ月齢の仔牛を15ヶ月肥育して22ヶ月で出荷する。繁殖牛は6産8才まで繁殖に使用し、後に4ヶ月程度肥育して出荷する。

2013年8月4日日曜日

有害な物質とは何か?

第七条  農林水産大臣及び環境大臣は、次に掲げる愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止するため必要があると認めるときは、農業資材審議会及び中央環境審議会の意見を聴いて、製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、当該愛がん動物用飼料の製造、輸入又は販売を禁止することができる。
  有害な物質を含み、又はその疑いがある愛がん動物用飼料
  病原微生物により汚染され、又はその疑いがある愛がん動物用飼料
  農林水産大臣及び環境大臣は、前項の規定による禁止をしたときは、その旨を官報に公示しなければならない。


この法律では有害な物質についての規定は無い。省令には農薬の濃度について規定がある。家畜の飼料は畜産物を通してヒトに摂取されるから厳しい規定があるが、愛がん動物の飼料には特に定めはない。

2013年8月2日金曜日

愛がん動物用飼料の成分規格等に関する省令

平成二十一年四月二十八日
農林水産省令・環境省令第一号
愛がん動物用飼料の成分規格等に関する省令
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号)第五条第一項
の規定に基づき、愛がん動物用飼料の成分規格等に関する省令を次のように定める。
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(以下「法」という。)第五条第一項に規定
する愛がん動物用飼料の成分規格並びに製造の方法及び表示の基準については、別表に定める
ところによる。
附 則
(施行期日)
第一条 この省令は、法の施行の日(平成二十一年六月一日)から施行する。
(経過措置)
第二条 法第六条第一号、第二号及び第四号に掲げる行為であって、平成二十一年十二月一日
以前に製造された愛がん動物用飼料に係るものについては、同条の規定は、適用しない。
2 法第六条第三号に掲げる行為であって、平成二十二年十二月一日以前に製造された愛がん
動物用飼料に係るものについては、同条の規定は、適用しない。
3 製造業者、輸入業者又は販売業者が、平成二十一年十二月一日以前に製造された愛がん動
物用飼料であって、法第六条第二号及び第四号に規定する愛がん動物用飼料に該当するもの
を販売した場合又は販売の用に供するために保管している場合における当該愛がん動物用飼
料については、法第八条(第一号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。
4 製造業者、輸入業者又は販売業者が、平成二十二年十二月一日以前に製造された愛がん動
物用飼料であって、法第六条第三号に規定する愛がん動物用飼料に該当するものを販売した
場合又は販売の用に供するために保管している場合における当該愛がん動物用飼料について
は、法第八条(第一号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。
別表 1
販売用愛がん動物用飼料の成分規格
(1) エトキシキン、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールの販売用愛がん動物用飼料(販売(法第6条第1号に規定する販売をいう。)の用に供する愛がん動物用飼料であって、当該愛がん動物用飼料を製造する事業場において愛がん動物に使用されるものを除く。以下同じ。)中の含有量は、それぞれの有効成分の合計量で販売用愛がん動物用飼料1トン当たり150g以下でなければならない。ただし、エトキシキンの販売用愛がん動物用飼料中の含有量は、犬を対象とする販売用愛がん動物用飼料にあっては、販売用愛がん動物用飼料1トン当たり75g以下でなければならない。
(2) アフラトキシンB1の販売用愛がん動物用飼料中の含有量は、0.02ppm以下でなければ
ならない。
(3) 次の表の第1欄に掲げる農薬(農薬取締法(昭和23年法律第82号)第1条の2第1項
に規定する農薬をいう。)の成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物
質を含む。)の販売用愛がん動物用飼料中の含有量は、それぞれ同表の第2欄に定める量以下でなければならない。
第1欄                第2欄
グリホサート              15ppm           
クロルピリホスメチル           10ppm
ピリミホスメチル             2ppm
マラチオン               10ppm
メタミドホス              0.2ppm
- 12 -(4)
(1)から(3)までに規定する物質の販売用愛がん動物用飼料中の含有量を算出するに当た
っては、当該販売用愛がん動物用飼料中の水分の含有量が10%を超えるときは、その超
える量を当該販売用愛がん動物用飼料の量から除外するものとし、当該販売用愛がん動
物用飼料中の水分の含有量が10%に満たないときは、その不足する量を当該販売用愛が
ん動物用飼料の量に加算するものとする。
2 販売用愛がん動物用飼料の製造の方法の基準
(1) 有害な物質を含み、若しくは病原微生物により汚染され、又はこれらの疑いがある原
材料を用いてはならない。
(2) 販売用愛がん動物用飼料を加熱し、又は乾燥する場合は、原材料等に由来して当該販
売用愛がん動物用飼料中に存在し、かつ、発育し得る微生物を除去するのに十分な効力
を有する方法で行うこと。
(3) プロピレングリコールは、猫を対象とする販売用愛がん動物用飼料に用いてはならな
い。
3 販売用愛がん動物用飼料の表示の基準
販売用愛がん動物用飼料には、次に掲げる事項を表示しなければならない。
ア 販売用愛がん動物用飼料の名称
イ 原材料名
ウ 賞味期限(定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質
の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限
を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。
)
エ 製造業者、輸入業者又は販売業者の氏名又は名称及び住所
オ 原産国名
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2013年6月15日土曜日

中央獣医会雑誌の付録・日本家畜売買法

古本屋で購入.著者は佐藤清明.明治二十四年九月に募集された懸賞論文を刊行したもの.馬喰や伯楽について詳しい記載がある.また,近世の皮の取り扱いについても興味ある記述がある.
http://www.kisuiiki.jp/old/activity2/museum/okiuma.htmlも参照のこと

2013年3月29日金曜日


牛の寿命と年齢別構成

牛の寿命を十五年として,年齢別の頭数をグラフにした.縦軸は年齢,横軸は千頭の牛群の実数で表示している.千頭の牛群を維持するためには毎年165頭の子牛が生まれて来る必要がある.死亡数も同じとなる.牛の場合は性比は牡が僅かに大となるから新生仔牝は81-2頭になる.この群で繁殖可能な牝牛は268頭,受胎率61.5%で牛群を維持する事が出来る.
 実際の家畜としての牛の群構成は極めて歪で,乳牛は洋種の若い牝のみ,肉牛も雑種の若い去勢牛だけとなり,役牛は日本にはいなくなった.


2013年3月22日金曜日

天保二年の大一揆

天保二年の大一揆は,七月二十六日,吉敷郡小鯖村観音原皮番所を発端とする.この時の皮番所の設置は不浄の皮が穂孕み時の田の側を通行すると不作になるという伝説に基づいている.
 近世の皮とは特牛皮のことで,これは斃牛馬の死体処理権を持つ身分の者が藩に上納する重要な品であった.しかし,近世の萩藩では軍用の皮はさほど必要ではなかったため,一部分は金銭で上納されていた.萩藩では皮一枚が銀六匁とされているから,現在の金額に換算して四万円ほどであろうか.
 小鯖村の番所で取り締まる皮とは,仁保一帯から三田尻に津出しする皮で,宮野・山口・吉敷の皮は川船で小郡の東津に津出しされ,それぞれ瀬戸内海船便で大阪の渡辺村に運ばれたと見られる.
 

2013年3月14日木曜日

七十一番職人歌合

むまかはふ馬買,かはかはふ皮買が登場する.皮買の持つ皮は,大きさからして鹿の皮であろう.

2013年2月4日月曜日

蒲の穂綿と因幡の素兎伝説

蒲黄を止血に用いるとの説がある.蒲黄とは蒲の花粉のことで,穂綿とは異なる.写真がその穂綿で,節分の日に撮影した.神話にある蒲の穂綿もこちらで,ふわふわの綿毛で傷面を覆い圧迫すれば止血が出来る.節分の頃に飛ぶ穂綿と,この頃の季節風・強いナムジの風の神『オホナムジノミコト』の話は科学的に良く合致する.なお,神話の兎は海水と真水で爛れた皮を洗うとあるが,両方共刺激が強く治療には適さない.正確には海水と真水の混じる所で,食塩濃度で一パーセントの所が最も良い.

2013年1月21日月曜日

河原ノ者

日葡辞書辞書にはCauarano mono カワラノモノ 河原の者 皮屋に同じ.死んだ獣の皮を剥ぐ者であり,また,癩病やみの者に対する監督権をもつ者.日葡辞書は1603年に著されたもので,この年は中世が終わり近世が始まる年でもある.