明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.

2018年4月21日土曜日

原 玄與先生著 喫狗傷考


2006/08/16Blog
[ 14:17 ]
スライドショウ ]
原 玄與先生著 喫狗傷考 江都書舗 青藜閣発行 

 序

 原子柔の黄岐の道に於ける、其れ心を用ひざる所無けん耶。■■遣らず、以て常に有らざるに及ぶ。常に有らざる者、弁博及ばざるに非ず。亦或は希に之に及ぶと雖も、未だ以て之を心に経ざるなり。則ち當に希有にして用ひること無かるべし。
 夫れ■狗の毒は、水火より猛なり。而して常に有らず。有れば則ち一日二日にして一を以て萬に至る。如し苟も触れば則ち人之に死す、水火に似たるを有す歟。火は以て撲滅すべく、水は以て雍ぐべく、以て決する可なり。■狗の毒は撲滅雍決の術なし。弁博亦希に及べば則ち薬石も竟にその治を失うなり。 
 予の幼時、一日人来りて云く、某地に■狗ありと。明日又人来りて云く、某里に■狗有り、戒む可しと。一日二日にして一を以て萬に至る。邑里州県、処として有らざるなし。然り、常に有らざれば則ち希に及ぶもの亦希なるが故に、治又治を得ず。乃ち死者何ぞ限らん。爾来殆んど五十年。又常に有らず、弁博又希に及ぶと雖も今又かくの如く有り。
 予の幼時、嘗て見る所則ち至る。所謂其れ水火より猛なり。子柔、希に有る■狗を以て治其の治を得ず。故に之を諸書より募閲し、希に及べば則ち集む。竟に巻と為し、人をして其の所に及ばしめんと欲するも逮ばず。予業に己に面視し、一を以て萬に至る。特に子柔心を用ふるの深きを嘆ず。年の後を我より先んずる者、一たび之を見れば則ち皆能く之を識る。子柔其れ勤めよや哉。
 安永辛丑仲春 淡園 埼 允明 序 印 印

 ■狗傷考を刻するに叙す。
 吾が友子柔の業たる、三世其の美を済す。生死骨肉、治を請うて市の如し。門人笈を負いて、諄々誘掖し、数を守ること精明、論着籍を成す。或は帳秘を問い、先づ此の筴を授く。毒の身に逼る何ぞ疾急がざらん。■狗人を囓む。其の毒深く入る。一に治療を失せば鍼縊死及び難し。犬と医と交も害を為す。是れ其の論の以て立つ所、先に急に後に緩し。行して将に習う所を伝えんとし、■狗傷考を刻す。
 天明三年癸卯冬 水戸 立原 萬 印

 ■狗傷考
 目次
 論 第一
 治法第二
 薬法第三
 灸法第四
 刺法第五
 禁忌第六
 治験第七
 附録 毒蛇諸虫咬
 鼠 咬
 ■狗傷考 叢桂亭随筆之一
 水藩医官 原 昌克 子柔 甫 著

 論 第一 
 夫れ虫獣の人を咬害するもの多し。虎狼蛇蝎の害の若きは、深山幽谷、絶人の地、人稀にに遇ふ所にして其の禍に罹るもの、亦た甚だ多からず。独り風犬の人を害するや、都鄙市朝を問はず。其の毒に触るもの比比相属す。若し夫れ理療一失すれば、則ち其の毒膏肓に入る。或は偶々■る者も亦た生冷油■を誤食すれば、則ち旧毒再発、口渇引飲し、妄語狂騒、狗叫の如し。其の証奇怪、名状すべからず。故に之を治するの法、必ず先ず躯内の毒を刈除するを以て要と為す。其の術、予め論定せざるにはあるべからず。夫れ風犬の行るや四五月の際尤も甚しと為す。城郭県鎮、烟火相臨の地、狂狗人を咬む有れば、則ち子弟悪少、相引て之を撲殺す。寒郷陋巷の若き、一犬横行、毒を数人に流す。又、常狗之と闘えば伝染して癲狗となる。是に於て禍に罹る者、亦た少からず。理療一失せば医と犬と、交ゝ害を相為すもの虎狼より甚だし。要するに須く其の方法を照して、宿毒の遺患無かるべし。

 左氏伝に云く、国人■狗を逐と云う。即ち風犬なり。或は■犬、癲狗、風狗、狂犬等の称、皆な同義なり。

 千金論に曰く、凡そ春末夏初、犬多く狂を発す。必ず小弱を誡め、杖を持して以て予め之を防ぐ。防ぎて免れざるもの、灸するに出るは莫し。百日の中、一日も闕けざるもの、方に難を免るることを得。若し初め瘡■へ、痛定るを見て即ち平復と言ふ者、是れ最も畏るべし。大禍即ち至る。死旦夕に在り。昌克按ずるに信なるかな此の言。多くは枯薬を以て傷処に貼し、瘡乾痂脱するを看て、■て全痾と為す者、速なるは旦夕、遅きは旬月、終わりに鬼簿を免れざるに至る。

 聖済総録に曰く、■犬齧ば犬狂疾を発し、■躁人を齧む。若し之れに中れば、人をして疼痛止まざらしむ。発狂犬聲の如し。急に之を治せざれば、亦た能く人を殺す。男子三日を過ぐれば治せず。婦人五日を過ぐれば治せずと。昌克按ずるに、犬毒の男女を以て理療の遅速を論ずるは蓋し妄誕也。

 胡■曰く、風狗咬傷は此れ乃ち九死に一生の病と。急ぎ斑蟄七枚を用て、糯米を以て炒り黄にし、米を去り末と為し、酒一盞を半盞に煎し空心温服して下を取る。小肉狗三四十枚を盡ると為す。数少きが如きは、数日再服すること七次。狗形無れば永く再発せざる也。累に試み累に験ありと。
 
 孫一奎曰く、斑猫七枚を用て頭足翅を去り、糯米少許を以て、新尾上に於て同じく炒り、米黄香を以て度となす。米を去て用いず。斑猫を以て研り砕き、好酒調へ下す。能く酒を飲む人は再び一盃を進む。傷の上下を看て服す。當日必ず毒物有り。小便に従つて出づ。小狗の状の如し。未だ下らざる者の如きは、次日再進す。如し又下らざれば又之を進む。毒物出るを以て度と為す。進て七服に至る。毒下らずと雖も亦害無し。薬を服するの後、腹中必ず安からず。小便茎中刺痛す。必ず慮からず。此毒薬の為に攻られて将に下らんとするのみ。痛甚しきもの、蕪青一匙を以て甘草湯を煎じ送下す。即ち止む。蕪青無きが如きは青黛亦可なり。疾癒て後、急に香白■五銭、雄黄二銭半を以て末と為し、韮根を搗き、自然汁を湯酒に調へ下す。斑猫の毒を去り、水を以て浄漱し、口に青葱白を嚼み傷処に■す。小■を留め毒気を出す。他草薬を用て■すべからず。
 又曰く、急に治せざれば小狗を生ず。必ず人を殺す。雄黄、蝉脱を等分に末と為し調へ、傷処に敷く。立ところに癒ゆ。

 医方大成に云く、大斑■三七枚を用て頭足翅を去り、糯米一勺を用て■ゝ炒り過し、別に七枚を以て前の如く炊り、色変せば復た之を去り、別に七枚を以て前の如く青烟に至るを度と為す。■を去り、只米を以て粉と為し、冷水を用て清油少許を入れ、空心に調服す。須臾に再進一服す。小便毒物を利下するを以て度と為す。如し利せざれば再進す。利後肚痛せば急ぎ冷水を用て青■を調へ之を服す。以て其の毒を解す。否なれば則ち傷有り。黄連水も亦之を解すべし。但し宜く一切の熱物を服すべからず。

 李中梓曰く、斑猫は■犬の悪物を下すと。

 張■曰く、斑猫七枚を以て翅足を去り、炙り黄にし、■■と同じく搗き汁にし之を服す。瘡口を風無き処に於て悪血を■去り、小便にて洗浄し、髪灰之を敷く。服後小便當に■毒有て泄出すべし。三四日後、當に肉狗形有るべし。三四十枚を尽と為す。数少きが如きは再び七枚を服す。若し早く服せば、狗形無しと雖も永く発せずと。

 ■廷賢曰く、斑猫翅足を去り七■、香附七■、共に細末と為し一服と作す。焼酎を調へ下す。腹痛忍ぶべからざるが如きは、猪肉湯一両口して吃して之を解すれば、即ち止む。一時ならずして小便出ず。狗形下り来る。即ち巳む。鑼鼓風を避ること十七日なり。
 又曰く、斑猫七箇を用て翅足を去り末と為し、酒に調へ服す。小便桶内に於て、衣沫狗形に似たるものを見ば効と為す。無きが如きは再び服す。須く六七次なるべし。狗形無きも亦再発せず。甚だ効あり。

 呉珠曰く、風狗の咬傷は急に斑猫七箇を用て末と為し、温酒に調へ服す。其の毒小便中より去る。特に尿缸に清水を盛せんとし、患人をして其中に尿せ令むべし。半日を停め、濁気凝結し狗形の如きを見ば則ち去る。狗形を見ざる如きは、須く七次服すべきこと。方に可なり。狗形無れば乃ち再発せず。極めて験あり。若し小便渋れば、益元散を水に調へ服す。最も妙なり。

 陳実功曰く、之を治すること遅きものは、毒大にして小便出で難し。必ず臓府を攻め、久ければ形をなす。

 昌克按ずるに、千金方の九漏を治する方中に、斑猫地■を用ゆ。其の方後に曰く、病小便より出づ。尿盆中に相視る。虫の形状有るが如し。又、膠汁に似たり。此れ病の出づるなり。此の他、古人瘰癧血疝等の病、斑蟄を用ゆるもの皆曰く、毒小便より出づと。或は粉片の如く、或は血塊の如く、或は爛肉の如し。皆其の験なり。但し毒の行く、小便必ず渋痛す。當るべからず。則ち李果破毒飲輩を以て之を道く。是れ斑猫を用るの常例にして、袖珍方に■犬傷を治する、蝦蟆を搗き爛し水服する者も亦小便内に沫を見るの事を言ふが如きに至る。
 張氏医通に曰く、■■一二枚を以て搗き汁し生食す。小便桶内に沫を見る。其の毒即ち解く。蓋し是れ犬毒に由て其の験を説くものなり。而して小便の穢物を利する、果して此の如きものの、余は未だ目に之を見ず。其の他風犬を治する方薬に斑猫を用ゆるもの、往々奇効を奏す。衆薬と同じからず。最も犬毒を攻るの良品なり。
 袖珍方に云く、先づ頂心に於て血髪三四根を抜き去ると。陳実攻曰く、其の人頂心に必ず血髪一両根有り、宜く抜去すべしと。孫一奎曰く、頂上紅髪を抜き去ると。呉珠曰く、患人の頂心中に於て一紅髪有り、即ち當に抜き去るべし。後薬を服し快効すと。張■曰く、先づ患人の頭上に於て、血髪二三茎を抜き去ると。廷賢曰く、宜く番木鼈を水に磨して吃すべしと。即ち脳頂上を看よ、紅頭髪有り、急に摘去ると。馮■張曰く、胎髪焼て性を存し新香附と野菊を研細し、酒を調へ服す。酔を尽す。患人の頭を看よ、紅髪三根有り、速に抜き去れと。
 昌克按ずるに、近ごろ野呂元丈も亦た此の説有り。余嘗て之を索む。未だ其の謂ふ所の紅髪なるものを見ず。
 小品方に云く、■■膾を生食する、絶て良しと。張■曰く、■■一二枚を以て搗汁を服すと。肘後方に云く、■犬傷を治すに七日毎に一発す。■■膾を食して、断て良しと。亦、之を炙食すべし。本人をして之を知らしむること勿れ。自後再び発せず。袖珍方に云く、風犬傷を治すに即ち■■の後足を搗爛し、水に調へ之を服すと。
 昌克按ずるに、李中梓も亦■■の條下に於て、■犬の効を説く。又、況約か宋書に載す。張収(或は作牧)■犬の為に傷せらる。人の云、宜く蝦蟆膾を■ふべし。之を食て遂に愈ゆ、実に一奇良方なりと。野呂元丈も亦た蝦蟆膾の説有りて■■の事に及ばず。■■は是れ■■。■■は是れ癩■■。是れ通説なり。而して又、毒蛇咬を療すに、急に癩蝦蟆を取り、搗き爛し上に敷き、之を帛縛するの方有り。諸書載する所の蝦蟆の如き、蓋し是れ癩蝦蟆なり。
 李時珍曰く、古人■を通称して蝦蟆と為すのみ。今二物を攷するに、功用亦た甚だ遠からず。則ち古人用ふる所の多くは是れ蝦蟆。且つ近人亦た■■を用て効有り。而して蝦蟆は復た薬に入れず。
 又、鄭堡■通志に云く、蝦蟆の類多し。■■を以て上と為す。曰く■、曰く去甫、曰く若螫と。昔張鴨が弟、収、■犬の為に傷せらる。医の云く、宜く蝦蟆膾を食すべし。収甚だ之を難ず。鴨笑を含みて先づ嘗む。蓋し此の物、但し薬用に入る。食ふべきに非ず。爾雅に、■は■、一種あり、田中に生ず。大なるもの三四枚、重さ一斤、南人名けて水鶏と為す。又、蛤と名づく。又、一種山谷中に生ず。黒色肉紅、石鱗魚と名づく。並に食すべし。其の小なるもの■と名づく。其の■より大にして青色なるものを青■と曰ふ。凡そ蝦蟆の類は皆交合せず。惟此れ雌雄相対し、沫を吐き漸ゝ魚子と成る。遂に変して科斗と成る。爾雅に云く、科斗を活東亦は活師と曰ふ。古人科斗の書、蓋し象を此に取る。
 昌克、頃ろ久慈郡に遊び慈雲寺を訪ふ。語次犬毒の事に及ぶ。上人告て曰く、郡中其の患に遇ふ者、乃ち■膾を作り之を食ふ。遂に危篤に至る者無しと。因て知る、此の物、善く毒を治する。必ず蝦蟆■■の分に有らず。多用を妙と為す。諸書に載する所の如き、尤も以て信ずるに足る。
 上人又曰く、蝦蟆を■ふ後に、その頭上に物を発して癩■■状の如きもの有りと。一奇事なり。月余を経れば則ち脱去すと。
 或は語て曰く、人有り■犬の為に咬まる。急に赤豆、麻物、油膩、一切の毒物を取て煮食す。終に再発の患無し。癒て後油膩を忌まず経日の者の如きは、此の法宜しからず甚だ害を為すと。昌克未だ信ぜず。而して世俗此の法を用て毎々効を取る。数々験有る者を見る。因て知る毒毒を攻ると。斑猫を用る者と一般、蓋し経日の者斑猫を与へば、則ち相害する此の法と同きか。余、未だ其の當否を知らざるなり。姑く記て後考に備ふ。
 医宗金鑑に云く、豆■を用ひ研末し、香油調稠し、丸弾子大の如くす。常に■る処を開拭し、■開て■丸を看る。内に若し狗毛茸茸然たる有れば、此れ毒気巳に出るに係る。丸を易へ再び揩て茸毛無きに至りて方に止む。甚だ効と。余、未だ試みざれども恐くは妄誕なり。

 治方 第二

 千金論に云く、凡そ狂犬人を咬む。著訖れば即ち人をして狂せしむ。精神己に別る。何を以て知ることを得る、但し灸時を看よ。一度火下れば、即ち心中醒然惺惺了了を覚ゆ。方に咬れて己に即狂するを知る。是れ以て深く須く之を知るべし。此の病至て重し。世皆之を軽んず。以て意と為さず。是に坐して死するもの常に年ゝ之れ有り。

 吾初めて医を学ぶ。未だ以て業と為さず。人有り是れに遭ふ。将に以て吾に問はる。了に報答を知らず。是を以て吾手を経て、而して死する者一ならず。此に自り鋭意に之を覚ぶ。一解巳来、治する者皆癒ゆ。方に知る世に良医無く枉死する者半云云。

 昌克謂らく、風犬の一毒、原是れ外来の病。死生を以て焉を論ずべからざるものに似たり。然り治療一たび失せば則ち必死に至る。起すべからざるときは、則ち膏肓難癒の病と何ぞ擇ばん。犬と医と交ゝ相害す。懼れざるべけんや。是れ思■が沈思留心する所以なり。
 凡そ狂犬人を咬むもの、須く急に黄金漿を与ふべし。若し吐する者更に之を与ふ。且つ須く熱人尿を用て傷口を洗去るもの一再次なるべし。此時傷口上に於て、宜く之を細視すべし。當に薄膜の如くなるもの有り。是れ狗牙根の垢査なり。謹て留むべからず。速に之を洗ひ去る。流血脉脉として断へざるものを妙と為す。若し血流涌せざるもの、方に鋒針を将て之を刺破し、血出れば紫金丹を与ふ。血止めば傷口を拭去す。仍て艾火を上すこと法の如し。而して白玉湯紫金丹を送下す。毒甚しきは即服す。

 傷口未だ愈ず、発汗禁ぜず、亡陽する者は救い難し。宜く先づ足の委中を刺して血を出すべし。而して黄金漿両三合を与ふ。紫禁丹を主る。服後寸効無き者は死す。

 医、誤理し、或は飲食節を失し、旧毒再発する者は治し難し。

 傷口痊を報し、五六十日若くは百余日、其の人悪風口渇、睾丸内吊し、二溲閉結し、行歩動作呼吸乃迫するもの将に痙を発せんとせば、宜く急に之を理すべし。紫円を与えて之を取る。(其の毒の緩急と其の人の少長を量て剤を作る)二三日、若くは四五日、巳に痙を発し、口禁咬牙、角弓反張、口涎沫を吐し、舌縮り聲枯れ、眼昏み神無く、水飲下らざる者は死す。

 将に痙を発せんとする者、急に當に二溲を利すべし。而して手の尺中、足の委中を刺す。玉散之を主る。紫金丹も亦之を主る。
 
 小品方に云く、衆療差へず、毒人を攻め、煩乱■し、巳に犬臀を作す者、方に髑髏骨を焼き灰にし末し、東流水を以て方寸匕を和服す。以て活し止む。昌克按ずるに、此方甚だ奇験あり。即ち下に載する所の白壁散、是れなり。 

 赤水玄珠云く、経久宿毒、復た発する者多くは救い難し。薬療す可きもの無し。雄香散之を主る。(本救良方に出ず)若し牙関禁急、肯て服せざる者は則ち鼻を撚りて之を潅ぐ。服薬の後、必ず驚起すること勿れ。其の自醒するに任す。再び前薬を進め、然して死を免る者僅かに千百中の一二のみ。
 
 薬方 第三
 
黄金漿方
 生薑根(撞き汁を取る) 鉄漿
右二味各等分、毎服一合。冷服す。

紫金丹方(即王■百一選方。大乙紫金丹。一名萬病解毒丸。一名玉枢丹)
 山茲姑(皮を去り洗。二両) 川五倍子(洗 二両) 麝香(三銭)
 千金子仁(白者。研。紙に圧て油を去。一両) 大戟 (紅芽者。芦を去。一両半)
右五味、重羅勺せしむ。糯米■飲を用い之を和し、木臼杵千杵、一銭一錠に作し、病甚き者は連服す。(湯火傷、毒蛇悪犬、一切の虫傷、並に冷水に和し磨塗す。仍て之を服す。百一選方に詳なり。

青玉散方 ■犬人を咬むを理す。
 青黛 雄黄
右二味等分末と為す。毎服五分。桃根白皮の煎汁を送下す。日二夜一。白玉湯も亦得たり。
白玉湯方 ■犬人を咬むを理す。
 杏仁(三銭) 桃根白皮(二銭)
右二味、水二合を以て、煮て一合を取る。日に二剤。別に杏仁、葱白、倶に杵き泥と成し、瘡口に敷く。灸すること数十壮。口をして合せざらしむ。甚だ妙なり。

白璧散方 旧毒再発し、狂躁悶乱する者を理す。
 天霊蓋
右一味、研り末と為し水服す。

雄香散方(救急良方の方)
 雄黄(五銭) 麝香(二銭)
右二味研り勺し、酒にて下す、二服に作す。

蝦蟆膾法
 蝦蟆切て両股を取り、皮を去り洗浄し、膾に作す。柚橘芳芽の類、其の宜きに適す。或は炙食する者、効少し。冬月の如きは、乾蝦蟆煎服す。多を以て妙と為す。其の効大いに劣る。

小品方に云く、若し重発する者、■蜍膾を生食する、絶て良し。亦た之を焼き食すべし。必ず其の人をして初て知しめず、囓を得て便此と為す。即ち発らず。
 古籍用ひる所の薬品、頗る多し。其の散して諸書に在るものを抄して、以て考策に備ふ。

内治
 ■蜍 蝦蟆 葛根
 斑螯 雄黄 青布汁
 頭髪 野菊 桃根白皮
 麝香 狼牙 蝟頭灰 水服
 故梳 韮根と同く煎服。又韮汁服す 桔梗
 狼牙草灰 狼肉 天霊蓋
 黒丑 梹榔 木鼈子
 番木鼈 鉄華粉 乳香
 千金子仁 蔓菁 杵汁



[ 更新日時:2006/08/16 14:19 ]
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