明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.

2009年4月2日木曜日

山口県獣医会規約

  山口県獣医会規約
   明治廿四年
   四月廿二日筆記ス

 山口県獣医会規約

 第一章  総則

 第一條 本会ハ山口県獣医会ト称ス
 第二條 本会ハ吉敷郡山口ニ設置ス
     当分ノ内吉敷郡吉敷村中村資一方ニ
     設ク
 第三條 此規約ハ県庁ノ認可ヲ得テ履行スルモノナ
     レハ自今改正追加ヲ要スル事項在ル時ハ亦此
     手続ヲナス可シ

 第二章 目的

 第四條 本会ハ県内居住ノ獣医団結シテ其学術治療
     ノ進歩改良及人畜衛生ノ普及を図ルカ為メニ設
     クルモノトス

 第三章 会員

 第五條 会員ハ本県居住ノ獣医ヲ以テ組織ス
     但シ斯道ニ熱心ナルモノハ会員二名以上ノ諾介ニヨリ
     準会員タル事ヲ得ル 
 第六條 本会ノ旨義ヲ翼讃シ本会ニ裨益アルモノハ之
     ヲ推撰シテ特別会員トナス事アル可シ
 第七條 会員タラント欲スルモノハ幹事ニ通知シ会員簿ニ記名捺
     印シ此規約ヲ団守ス可シ
 第八條 本会ノ名誉ヲ毀損シ若クハ数々此規約ニ
     背戻スルモノハ協議ノ上之レヲ退会セシム
 第九條 会員中転居或ハ一ケ月以上ノ旅行ヲナス時ハ直ニ本
     会ニ通知ス可シ
 第十條 退会セントスルモノハ其事由ヲ詳記シ之レヲ幹事ニ請求
     スベシ
     但此場合ニ於テハ幹事ハ其件可否ヲ会議ニ諮ル
     モノトス
 第十一條 正当ノ事由ナクシテ退会スルヲ得ス

 第四章 集会

 第十二條 集会ヲ分ツテ総集会及部会ノ二種トナス総集会ハ総
      会員ヲ以テ組織シ部会員ヲ以テ組織ス
 第十三條 総集会ハ一ケ年一回部会ハ一ケ年四回開会スルモ
      ノトス
      但シ開会期日ハ総集会ニ在リテハ之レヲ県庁ニ
      部会ニ在リテハ之ヲ所轄郡役所ニ予メ報告スルモノ
      トス
 第十四條 不得止事故アリテ集会ニ欠席セントスルモノハ予メ之レヲ届
      出ヘシ
 第十五條 各部会ニ於テ決シ難キ事項ハ之レヲ総集会ニ提
      出ス可シ 
 第十六條 前条ノ他会員三名以上ノ請求アル時ハ部会
      ヲ十五名以上若クハ二部会以上ノ請求アル時ハ総
      集会ヲ臨時ニ開会スルヲ得
 第十七條 総集会及部会ニ於テ左事項ヲ講気討議ス
     一、獣医奥義ヲ改良スル事
     二、獣医術ニ関スル内外ノ新説治験及各自ノ実
       験其他総テ家畜ノ治療衛生ニ関之諸件
     三、屠畜場搾乳ノ臨検管理及家畜伝
       染病ノ如キ総テ家畜ノ公衆衛生ニ関係タ及之諸件
     四、風土病伝染病ノ原因探求及其ノ予防法治
       療法ニ係カル事件
     五、牧畜事業に関スル学術実験等総テ
       畜産ノ繁殖改良ニ係カハル諸件
 第十八條 県庁及郡役所ヨリノ諮詢及会員中ヨリ
      提出ノ問題ハ勿論総テ前条ニ記載スル事項
      ハ会員外ノ質問ニ係ルモノト雖モ討究論議
      スベシ

 第五章 役員

 第十九條  本会ニハ左ノ役員ヲ置ク
    会長   一名
    幹事   一名
    書記   一名
 第二十條  役員ハ投票ヲ以テ之レヲ定ム但書記ハ会
       長ノ特撰トス
 第二十一條 会長ハ一切ノ事務ヲ総轄シ議事アリテハ之
       レカ議長トナル
       但シ特別会員アル時ハ之レヲ推挙シテ議長職務ヲ
       執ラシム
 第二十二條 幹事ハ会長ノ助ケ一切ノ事務ヲ処理シ○○ヒ
       会計事務ヲ担任ス会長事故アル時ハ之
       レカ代理タルヲ得ル
 第二十三條 書記ハ議事筆記及雑務ヲ担任ス 
 第二十四條 役員ノ任期ハ二年トス但薦再撰スルモ妨ナシ

 第六章 積立金及会費
 
 第二十五條 会員タラントスルモノハ其身分ヲ保証スル為メ入会ノ際
       金三円ヲ積立爾后年々壱円弐拾銭宛総額弐
       拾円ニ満ルマテ積立ヘシ但シ積立金ハ各部会於
       テ之レヲ保管ス
 第二十六條 積立金ハ貯金トナシ増殖ヲ計ル可シ
 第二十七條 積立金ハ退会又ハ死亡ノ際ハ之レヲ返付ス可シ
       但シ第八条及第十一条ニ該当スルモノハ返付セサルモノトスル
 第二十八條 会員ハ出席ノ有無ヲ問ハス毎回金拾銭宛ヲ
       支出シ会費ニ充ツヘシ
 第二十九條 費用ノ収支決算次年ノ総集会ニ於テ之レヲ報
       告スルモノトス
 第三十條  特別会員ハ積金ヲナシ及会費ヲ支出スルヲ要セス

 第七章   準会員

 第三十一條 準会員ハ特ニ設ケタル条項ノ外本規約ニ服従ス
       ルノ義務アリトス但シ積立金ヲナスヲ要セス
 第三十二條 準会員ハ会員同等ノ権利ヲ有スト雖モ選挙
       権及被選挙権を有セス又議決ノ数ニ入ルヲ得ス
 第三十三條 本会中ニ左ノ部会ヲ置ク
      第一部会 (大島郡玖珂郡熊毛郡)
      第二部会 (都膿郡佐波郡)
      第三部会 (吉敷郡美祢郡阿武郡)
      第四部会 (厚狭郡)
      第五部会(豊浦郡大津郡赤間関市)
 第三十四條 各部会ニ部長一名ヲ置キ一切ノ事務
       ヲ処理セシム
       選挙ハ第二十條第二十四條ノ例ニ拠リ選定
       ノ上ハ之レヲ本会ニ報告スベシ
 第三十五條 各部会ニ於テ此規約ニ本キ更ラニ周密
       規約ヲ設クルヲ得ルヲ得ル但シ此場合ニ於テ
       本会会長ヲ経テ第三條ノ手続ヲナスヘシ
 第三十六條 各部会ニ於テ協議むし毎月金拾銭以下
       ノ会費ヲ各員ヨリ徴収スルヲ得ル
 第九章 雑則

 第三十七條 部会ノ開会時日出席人名及議事
       提要ハ其都度之レヲ郡役所及本会報
       告スルモノトス
 第三十八條 総集会ノ開会時日出席人名及議事
       提要並ニ各部会ノ概況ハ毎年一回之レヲ県庁ニ
       報告スルモノトス

 第十章 謝儀規定

 第三十九條 薬価及手術料等ハ左ノ規定ニ拠ルベシ
      一、馬灸料     一ケ年極メ
        此ハ郡村ノ習慣ニ由リ米三升乃至五升
        若クハ金十五銭乃至四十銭ノ範囲内ヲ
        以テ相定ムルモノトス
       薬価
        但シ牛馬ハ左表ノ金額羊豚及山羊
        ハ三分ノ二犬猫ハ二分ノ一家兎及家
        禽ハ三分ノ一トス 
   内服薬    一日量     拾弐銭
   頓服薬    一回量     拾銭以上弐拾銭以下
   点眼水    拾五瓦ニ付   三銭以上拾銭以下
   外用水剤   二百瓦ニ付   五銭以上拾五銭以下
   膏薬     三十瓦ニ付   五銭以上拾銭以下
   油剤及擦剤  百瓦ニ付    拾銭以上弐拾銭以下
   皮下注射薬  一回量     拾五銭以上弐拾銭以下
   吸入薬    一日量     拾銭以上弐十五銭以下
   潅腸薬    一回量     五銭以上弐拾銭以下
  
  一外科手術  
    特別手術    三拾銭以上壱円以下
    産科手術    五拾銭以上三円以下
  
  一薬剤入器具及編帯ガーゼ等原価の二
  一往診料診察料及小手術等ハ道路ノ遠
   近手術難易ニヨリ応分ノ謝儀ヲ受クベシ
  一診断書調製料ハ金五銭トス

0 件のコメント:

コメントを投稿