明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.

2009年4月26日日曜日

日本犬のルーツ

南で生まれた北海道犬「科学朝日」1989年田名部雄一

犬血球ヘモグロビン変異型やガングリオシドモノオキシゲナーゼ,血漿アルブミンSなどの型遺伝子頻度から日本犬のルーツを探るもので,完全に理系の歴史研究である.

 この論文によると,日本で最も古い犬の骨は縄文初期のものが横須賀市夏島貝塚から出土,愛媛県上里岩洞窟からは八千五百年前の犬埋葬例が出土している.これが弥生時代になると埋葬の形跡がなくなり,食用にされたと思われる痕跡の骨が出土することから,犬を食べる人間が日本列島へ入ってきたと推定している.

 遺伝子頻度の調査から,縄文時代の列島の犬は台湾から北海道に分布した南方アジア型の在来種で,弥生から古墳時代になってここに朝鮮半島の珍島犬(北方エスキモー種)種の血が入って混血がはじまり,多くの日本犬種が生まれて来る.遺伝子の位置関係からすれば,純粋の在来犬は北海道犬で,屋久島犬群や美濃柴犬,甲斐犬がこれに次ぐ.大陸からの遺伝子を色濃く持つ犬種は山陰柴犬,対馬犬群,三重実猟犬で,信州柴犬は中間に位置する.

 馬や馬具の渡来と重ね合わせて見ると極めて参考になる.この論文は古本屋で買った『日本人の起源を探る』という雑誌の中に掲載されていた.どれでも百円均一のゴミ本も見逃せない.

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