開田村郷土資料館所蔵「馬痾癒秘伝」
馬えとかいの事
一、春はきのへきのと病大事
酢きものをかふへし
巳の時なおるなり
一、ひのへひのとにハ酢きもの
あまきものにかきものかふ
へし卯巳の時なをる
一、仝つちのへつちのとには
にかきものかんざうかふ
へしよく治るなり
一、仝かのへかのとにハ塩を
かふへし未辰戌の
時なおるへし
一、仝みつのへミつのとには
酢きものをかふへし
あまき物必へし申酉
戊の時なおるへし
一、夏ハきのへきのとには
にかきものをかふへし
あまきもの必なり戌寅
卯巳の時なおるへし
一、仝ひのへひのと大事也
人しんかんさう酢きもの
かふへし塩ハ必なり
巳午丑未の時になおる
一、仝つちのへつちのとには
にかき物をかふへし
からきものもよし巳午
未辰戌の時いゆる也
一、仝かのへかのとにハあまき物
かふへしにかき物必也
一、仝みつのへミつのとには
すきものをかふへし
あまきもの必也但し申辰
一、かうらい薬の事
一、茯令 一、かんざう 一、かきからの玄
一、人参 一、くしん 右何東分
合セ事馬の病四キ四セ
んを 馬した
にぬるへし
一、かうらい薬万病療也
きしの足玄焼かきからの
玄焼東分合くしんごしつ
すみつ少加へ味噌を丸事
薬中へかうらいのこうよく
す つヽ入事三粒ほと
かふへし馬の乗すくミ
いきあひものくいにらミ
するものによし
馬の危事立つあり
鼻より血の出る事はいの
病也かく連のはり事足
の形也股の内かさをなす
事かんのはつらひ也
しさうのかたち家の馬なら
ハ一さう立み事かうて五十
日の内ニたつへし
人の馬ならハ養生すへ
からす一しさうてん三の事
とうきのあらはいせんこの
きのあらはい三つヲいふ也
合やうに口伝あり四き是に
鼻より血出すハあき一さう
さんミヲかふへし脹の内ニ
かさなすハはるの一さう
さんミをかうへし五十日の内
たつへし
馬の目薬の事
一、柳 一、えんせう 一、明ばん
一、わうへき何も粉
にしてさす此薬あん
き第一の秘伝也
ねつひ事ないら薬也
一、のさらし中 一、かきから中
一、白にしのから大 一、土りう中玄
一、たいおう中 一、せんたいおう中侭
一、くしん中 一、唐おしろい少まし
一、しやかう少 一、くこ少
右九ミを合
ないら薬事
一、茯令一セン 一、おもと一セン
一、やまもも一セン 一、天南生一セン
一、 一、烏瓜三セン
右五味酒にて用へし
右同薬
一、こせう一セン 一、やまもヽ二セン
一、ふくりう一セン 一、かんざう一セン
右四味酢ミつ用ゆ
へしたり
十二ないらのぬく薬
一、黒竹玄 一、いのこつち
一、烏瓜 一、蒲根
一、逢根 一、ふなはら
一、しんぶくりう 一、松の緑
一、杉の緑 一、にらの根
右何れも粉にしたる但し
黒竹三ト入て濁酒味噌
塩入て一日ニ二度ツヽ但一度ニ
五 ほとつヽかふへし
一、馬のいさミ薬に夏螫
の糞を七日酒にひたして
是粉にして用へし秘伝也
一馬の形冷熱の見様事
熱ハ舌乾き脉つよし
但し に脉あり
うちまたあおく後足赤
はるなり又ひえの馬の舌
ぬれたるハ脉しづむ
なりつねの たつへし
ないらの馬ハした根熱なり
眼にやに少出るなり
馬の方ニ心口の事
一、正月丑子 一、二月丑卯
一、三月卯巳 一、四月申酉
一、五月午寅 一、六月戌巳
一、七月亥巳 一、八月戌子
一、九月丑辰 一、十月丑巳
一、十一月戌子 一、十二月卯寅
右時ニ療治すへからす
馬五性の事
一、青あし毛 金を必 木性 此性庚申辛酉の病大事
一、栗毛ひばり毛 水を必 火性 壬子癸卯丑の病大事也
一、 毛かすけ 木必 土性 甲乙卯辰巳の日あしし
一、二毛くろ毛 土必 水性
病時は日性ヲ知ル事エトの性たり
一、卯辰巳日と時木性 馬の性日
ヲ見テ相克
一、午の日と時 ヲ見ベシ
相克ナらハ
一、酉戌亥日時金性 大事と見
ルへし
一、未申 丑日時土性 なホりよし
一、子の日と時水性
日の性はハイヘスエトノ性次第ニ見合テ可也
右時の性と馬の性トヲ
看合テ相性相克
総体見て療治すへし
馬病陰陽を知る事
病北ヨリ来 あし毛陽
一、丑卯日時ニ 但しとちハ陰也
仝東ヨリ来ル くり毛は陽
一、巳午日時病 ひバリ毛陰也
仝南より来ル つき毛ハ陽
申酉日時痾 かわら毛ハ陰也
辰の日病春東より来丑ハ冬北より
来ハ病南より来
丑未辰戌の時 かけハ陽也
さるけ陰也
一、亥子日時病 くり毛陽
二毛陰也
陽の馬ニハ左に病あり
陰の馬ニハ右ニ病ありと
しって療治すへし
右四季による事五形
如病也
馬の形時時知る事
一、丑時病馬ハ 申時痾ツク
一、巳午時ニ痾 亥子時病ツク
一、丑未辰戌時病 卯時痾ツク
一、亥子時病ハ 丑未辰戌時病也
としるへし相尅病時ハ
大事なり
十一月 三 七 庚辛
一、木性馬 沐 襄 絶 酉戌亥
子日 申日大事
二 六 十 壬癸子
一、火性馬 沐 襄 絶 之日大
卯 未 亥 事也
八 十二 四 申乙戌巳卯
一、土水 沐 襄 絶 壬癸大事
酉 丑 子日
巳辰乙丑刀未
甲之日
五 九 正 丙丁
一、金性 沐 襄 絶 午日
午 戌 丑
陽乾戌亥 陰坤未申
仝坎子 仝離午
陰陽二 艮丑 仝兌酉
仝震卯 仝巽辰巳
馬ヘヲヒリタレルハコクチウ云虫也
此薬にハいわう十二匁ねぶか
の白根ヲ手一束ニ十二把味
噌をこく入薬ホとせんし
白ら根を一味ニせんし
七日かふへし虫イノフニ有
ふんに虫阿る物なり
妙香散馬ニ熱薬也
一、甘草 一、茯苓 一、にんぢん
一、ここう 一、めうこう 一、おばこの根
一、川弓 一、こせう 一、ホうり三つ
一、せんたいこう 一、なんもつこう
十一色何れも粉にして東分
合セ塩少入て度々かふへし
長命丸
一、忍ぢん 一両 一、ちんかう 二両 一、甘草 一両
一、おんし 一両 一、とうき 二両 一、あひのは 二両
一、おわう 二両 一、ぐつのこ 一両
右何れも粉にして○是
ほどに丸くして酒にて
もゆにても用へし
人の産後産前によし
惣し事虫分によし
馬にハ熱薬吉
はなれ馬留むましない
以下呪唄につき略
血止の薬
足毛馬のふん
血とめの妙薬也
明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.
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