明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.

2009年3月26日木曜日

書名と刊記

書名と刊記
書誌学では書名を採る順は次のように決められている.
①巻頭書名 書の本文冒頭にある書名で,一般に書名と呼ぶ時はこの巻頭書名を言う.巻頭書名が同じ書が複数ある場合は,判別のために編者,版元,序文著者等の特徴を記す必要がある.
②序文の書名 刊頭書名の無い書の時は,序文に書名が記されていればこの書名を,また序文が無く,本文中に書名が記されている場合はこれを書名として採用する.
③版芯書名巻頭書名も本文中にも書名が無い場合は丁の中心・版芯に印刷された書名を採用するが,版芯の書名は略名が記されている事が多い.
④外題書名 巻頭書名,序文書名,版芯書名のいずれも無い時は,表紙の外題か,背の外題を採る.外題を題箋に記して貼り付けらている時は題箋書名と呼ぶこともある.
 今,『馬経大全』と呼ぶ書の多くは,和刻・寶善堂梓・馬師問編・西村載文堂版『新刻参補針医馬経大全』であるが,浅野文庫蔵本・伝朝鮮渡来本.寶善堂梓.馬師問編・白文『新刻参補針医馬経大全』や,版元の異なる和刻本がある.また,序文のある『元亨療馬集』の外題書名,一部の書写・版本『元亨療馬集』の版芯書名には『馬経大全』と記されたものがある.浅野文庫蔵本の『新刻参補針医馬経大全』の版芯書名も『馬経大全』である.
 書誌学では,刊記は書の著編者の氏名,出版年月日,出版元,出版地が正確に記されたものを採用する.一般に刊記は書の巻末にあり,奥書とも呼ばれる.奥書に刊記が無い場合は本文中から,本文中にも刊記が無い場合は序文の刊年月日を刊記とする.序文も無い場合は本文の内容や所持者の書き込み,体裁・装丁等から刊年を推定する.
 先の『元亨療馬集』の場合,丁・許序本は序文の刊記を以て刊年とする.従って丁序本は明刊,許序本は清刊となる.

参考書 長沢規矩也著『和漢古書目録記述法』,山岸徳平著『書誌学序説』,陳国慶著 沢谷昭次訳 『漢籍版本入門』1984年 研文出版

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