明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.
リンクリスト
2018年7月15日日曜日
2018年4月23日月曜日
日本家畜売買法・佐藤清明
著者の佐藤清明は明治十八年七月に駒場農学校を卒業。同期が時重初熊、廣澤辯二に生駒藤太郎とある。書誌的にはどのように扱うか苦しむ書物である。用紙は上等で昭和十八年の雑誌よりはるかに保存状態が良好である。
2018年4月22日日曜日
「日本獣医学史」の判別
「日本獣医学史」昭和四十二年復刻は奥付まで複製されたため昭和十九年の刊とされることがある。最も簡単な判別方法は書の寸法で書誌情報だけでも判別が可能。書誌情報に大きさ21cmとあれば初版、22cmとあれば復刻版である。復刻も内容は同じであるが特殊な研究にはこの判別が必要なことがある。国立国会図書館のデジタルコレクションは初版である。
2018年4月21日土曜日
獣医開業規則之義に付伺
2006/08/31のBlog
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12:59 ]
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獣医開業規則之義に付伺
獣医の義是迄府県適宜の処分に任せ自由営業差許来候処其徒たる曾て病理の何たるを知らず惟言われなき家伝の慣習若くは謹々の漢方等に拠りて施治するものにて要するに家畜の衛生を保護するに足るべきものに無之因て漸次之を改良せしめんが為め去る明治九年以来当省所轄農学校中に獣医の専門科を置き泰西の学術に基き正則又は変則の二法を以て生徒を養成し来候処既に卒業したる獣医学士或は獣医生も数多有之遇々府県にも採用せられ随て治術上に成功を顕はすに至り加え是迄慣習により営業致来候ものも漸く其迂拙を悟り到底泰西の学術に拠らされは真性の治療を得る能はさる事を略了解するの場合に有之抑我邦の牛馬たる啻に其種類の下劣なるのみならす其頭数に至りても人口に比較すれは其闕乏を極め農事軍用の得失利害に関する実に浅少にあらす然るに其改良繁殖を図るには之か衛生を保護すへき獣医の学術を振起して人医と同等の地位に進ましむるの計画なかるへからす依て獣医開業規則を制定せられ試験科目に拠り其及第者に限り来る明治十八年七月一日より当省に於て開業免状を下付致度但僻陋の村落に在て合格の獣医を得難き場合に於ては暫く開業仮免状を下付し以て漸次に完全せしめ度内務大蔵両卿協議の上別紙開業併試験規則布告布達案を草し此段相伺候条至急仰御裁可候也
明治十八年二月廿日 農商務卿伯爵西郷従道
太政大臣公爵三條實美殿
狂犬病の義に付警視庁へ照会の件
明治十七年十二月九日 農商務省新山荘輔
回答 明治十七年十二月十七日 警視庁
明治十七年一月より十一月三十日に至る狂犬及ひ平病犬撲殺の総数
和種狂犬 三百九頭
和洋雑種狂犬 五頭
和種病犬 一頭
和洋雑種病犬 五頭
総計三百二十頭
畜犬取締規則 畜犬取締は所轄警察署の警察官吏と警視庁が行う
獣医の義是迄府県適宜の処分に任せ自由営業差許来候処其徒たる曾て病理の何たるを知らず惟言われなき家伝の慣習若くは謹々の漢方等に拠りて施治するものにて要するに家畜の衛生を保護するに足るべきものに無之因て漸次之を改良せしめんが為め去る明治九年以来当省所轄農学校中に獣医の専門科を置き泰西の学術に基き正則又は変則の二法を以て生徒を養成し来候処既に卒業したる獣医学士或は獣医生も数多有之遇々府県にも採用せられ随て治術上に成功を顕はすに至り加え是迄慣習により営業致来候ものも漸く其迂拙を悟り到底泰西の学術に拠らされは真性の治療を得る能はさる事を略了解するの場合に有之抑我邦の牛馬たる啻に其種類の下劣なるのみならす其頭数に至りても人口に比較すれは其闕乏を極め農事軍用の得失利害に関する実に浅少にあらす然るに其改良繁殖を図るには之か衛生を保護すへき獣医の学術を振起して人医と同等の地位に進ましむるの計画なかるへからす依て獣医開業規則を制定せられ試験科目に拠り其及第者に限り来る明治十八年七月一日より当省に於て開業免状を下付致度但僻陋の村落に在て合格の獣医を得難き場合に於ては暫く開業仮免状を下付し以て漸次に完全せしめ度内務大蔵両卿協議の上別紙開業併試験規則布告布達案を草し此段相伺候条至急仰御裁可候也
明治十八年二月廿日 農商務卿伯爵西郷従道
太政大臣公爵三條實美殿
狂犬病の義に付警視庁へ照会の件
明治十七年十二月九日 農商務省新山荘輔
回答 明治十七年十二月十七日 警視庁
明治十七年一月より十一月三十日に至る狂犬及ひ平病犬撲殺の総数
和種狂犬 三百九頭
和洋雑種狂犬 五頭
和種病犬 一頭
和洋雑種病犬 五頭
総計三百二十頭
畜犬取締規則 畜犬取締は所轄警察署の警察官吏と警視庁が行う
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更新日時:2006/08/31
13:03 ]
大日本獣医会誌
2006/08/21のBlog
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08:05 ]
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大日本獸醫會誌1號1~6頁。明治18年9月 小澤温吉 論説「讀獸醫免許規則」
獸醫の職業は之れを分けては甚だ多端にして一人の兼ね能すべきにあらず。其用は頗る広 大にして一言の説き尽くすべきにあらず。官衛に市街に牧場に軍隊に往く処として用あら ざるは無く、之れを大にして公衆の資産を保護し、之れを小にして細民の家畜を救済し、其 世に効益を与うる事決して小々ならず。我邦維新前に於ては真正の獸醫なく、唯に伯楽及び馬醫なる者ありて五幾七道の間に散在せりと雖も、職業とする処は専ら馬牛の治療とその 蹄鬣を修理するに止まり、其目的とする処は斗升の米麥を甘受するにあり。其状恰も靴工髭師に異ならず(其中或いは大志を抱いて夙に泰西の獸醫学術に苦心せし者なきに非ずと雖も寥々数うるに足らず)。獸畜の衛生、伝染病流行病の予防、畜産の改良、食獸の検査の如きは夢だにも之れを感ぜざりしなり。況んや其治療と称するものは口蓋蹄冠の刺烙、附蝉の烙鐵に止まり、會々内科に属する病に遭えば妄りに無効の草根木皮を投じ、以て袖手傍観の謗りを免れんとするに於いておや。此類の輩は全國を通じて一万人に下らず。就中其性質を分析すれば十の七八は農或いは商を本業とし、病獸治療、蹄鬣修理の如きは其の内職に過きず殆んど農夫の雨天に草鞋を造り夜間に縄索を綯ふと一般なり。其治療を本職とするの輩に 在りても概ね馬商を兼ね或は主を馬商を業とする者あり。豈に之を以て伯楽と称し馬醫と 呼ふに足らんや。況ん乎之に獸醫の名を冠せんとするは、濁酒店の縄簾に傍ふて曾席料理の招牌を掲くるよりも甚たしきおや。此の如き名實不適當の輩に二百五十餘萬頭の貫重なる 畜産を委任せん事は甚た不安心の至りと云ふべし。我明治政府は夙とに此等の事情を洞察 せられ、陸軍省に於ては明治五年地方有力の馬醫を徴して軍馬の衛生治療の事を司らしめ、仝七年に彿國陸軍獸醫アンゴーを聘して獸醫生徒を教育し、内務省に於ては明治九年英國 獸醫ドクトル・マツクプライドを、農商務省に於ては仝十四年獨國獸醫ドクトル・ヤンソ ンを聘して前後数十名の生徒を養成し、以て之を各地方に派遣し其希望する處の業に就か しめたり。然るに地方の人民は数百年来の古俗舊慣に安し、西洋の獸醫に依頼して高貴の薬石を購はんより、寧口有合の来麥を出たして低価の伯楽を聘するの便且つ利なるに如かす と愚信し、伯楽も亦た米麥の扶持に甘んじ、唯々其佳客を失はん事を是れ恐れ、日夜狂奔疲 労して尚ほ願みざるの有様なれ。眞正の獸醫は連も民間に於て其伎倆を逞ふするの餘地を 視ず。何そ共効積を奏するの日あらんや。然れとも全國を挙けて皆此の如して云ふにあらす。近来岩手、秋田には縣立獸醫学校あり。山形、仙台、石川、福岡、熊本其他の數縣には獸醫学校或は講習所等の設ありて、眞正の獸醫を聘し盛んに獸醫の生徒を教育せり。是に於てか獸醫の需要稍々端緒を開けり。然るに全國の廣き獸畜の多き僅かに二三獸醫の其所を得 たりとて満足すべきにあらず。宜しく益々眞正の獸醫をして普くひ真正の事業に就かしむ へきなり。政府も亦た早く茲に見るあり。明治十八年八月二十二日を以て雑録欄内に掲くる獸醫免許規則及ひ獸醫開業試験規則を発布せられたり。此規則の施行せらるゝに至らば従 来各地方に於て累世馬牛の治療を業するの輩は(現今獸醫の学術を講習する者を除き)勿論三稜鍼を放ち烙鐵を棄て、転業若くは破産するものなかるべしと雖とも、萬一舊来の獸 醫にして俄かに其進路の方向に迷惑するものある時は、気の毒の至りなれば政府も深く此 に顧慮せられ、規則の實行に一ヶ年の猶預を輿へ布告第五條を設けて以て當分従来の伯楽 或は馬醫をして、共営業を持續するの便を得せしめられたるものと信す。吾儕を以て之を視れば舊来の獸醫則ち伯楽は前に述ふるが如く、概ね病畜治療と蹄鬣修理を専業とするに眞 正の獸醫は唯々病畜の治療を為すのみならず、獸畜の衛生を説き、流行病傅染病の預防を講し、畜産の改良を謀り、屠獸屠肉販売乳の検査を行なひ、大小獸市の健全を監察し、其他人畜の間に於ける衛生上の関係を協議する等の重任あるを以て、彼の蹄髭修理の如きは眞正獸 醫の為すべき事にあらさるか如し。依て吾儕は蹄鬣修理の業を獸醫の範囲外に置かれん事 を希望す。若し蹄鬣修理の事を以て馬醫専業の一部とせらるゝは、譬は従来近隣の薬舗に於て診察を受け並に賈薬を服したるに、今や其診察を廃せられて西洋醫師の開業を免許せら ると同時に、公浴堂と結髪を一緒に失ひたるが如く、獸畜の為め不便なるべしと思ふ。吾儕 は此の如き職業を方今都府に行はるゝ蹄鐵工の部類に属し、別に蹄鐵工営業規則或は取締 規則等を設けられ以て之を統轄せられん事を希望すべし。果して此の如くなれば従来の伯 楽も尚ほ其営業の一部たる蹄鬣修理を営為するを得べく、又た眞正の獸醫も主ら獸醫たる べきの本分を守り強て他の賤業を兼ぬるに及ばざるべし。偶々獸醫免許規則を発布せらる に會し、聊か思ふ処を陳ふる事爾り。明治十八年大日本獸醫會誌第一號の発兌に臨み聊か感ずる所あり。左の小言を記し以て今回の責を塞がんとす。
獸醫の職業は之れを分けては甚だ多端にして一人の兼ね能すべきにあらず。其用は頗る広 大にして一言の説き尽くすべきにあらず。官衛に市街に牧場に軍隊に往く処として用あら ざるは無く、之れを大にして公衆の資産を保護し、之れを小にして細民の家畜を救済し、其 世に効益を与うる事決して小々ならず。我邦維新前に於ては真正の獸醫なく、唯に伯楽及び馬醫なる者ありて五幾七道の間に散在せりと雖も、職業とする処は専ら馬牛の治療とその 蹄鬣を修理するに止まり、其目的とする処は斗升の米麥を甘受するにあり。其状恰も靴工髭師に異ならず(其中或いは大志を抱いて夙に泰西の獸醫学術に苦心せし者なきに非ずと雖も寥々数うるに足らず)。獸畜の衛生、伝染病流行病の予防、畜産の改良、食獸の検査の如きは夢だにも之れを感ぜざりしなり。況んや其治療と称するものは口蓋蹄冠の刺烙、附蝉の烙鐵に止まり、會々内科に属する病に遭えば妄りに無効の草根木皮を投じ、以て袖手傍観の謗りを免れんとするに於いておや。此類の輩は全國を通じて一万人に下らず。就中其性質を分析すれば十の七八は農或いは商を本業とし、病獸治療、蹄鬣修理の如きは其の内職に過きず殆んど農夫の雨天に草鞋を造り夜間に縄索を綯ふと一般なり。其治療を本職とするの輩に 在りても概ね馬商を兼ね或は主を馬商を業とする者あり。豈に之を以て伯楽と称し馬醫と 呼ふに足らんや。況ん乎之に獸醫の名を冠せんとするは、濁酒店の縄簾に傍ふて曾席料理の招牌を掲くるよりも甚たしきおや。此の如き名實不適當の輩に二百五十餘萬頭の貫重なる 畜産を委任せん事は甚た不安心の至りと云ふべし。我明治政府は夙とに此等の事情を洞察 せられ、陸軍省に於ては明治五年地方有力の馬醫を徴して軍馬の衛生治療の事を司らしめ、仝七年に彿國陸軍獸醫アンゴーを聘して獸醫生徒を教育し、内務省に於ては明治九年英國 獸醫ドクトル・マツクプライドを、農商務省に於ては仝十四年獨國獸醫ドクトル・ヤンソ ンを聘して前後数十名の生徒を養成し、以て之を各地方に派遣し其希望する處の業に就か しめたり。然るに地方の人民は数百年来の古俗舊慣に安し、西洋の獸醫に依頼して高貴の薬石を購はんより、寧口有合の来麥を出たして低価の伯楽を聘するの便且つ利なるに如かす と愚信し、伯楽も亦た米麥の扶持に甘んじ、唯々其佳客を失はん事を是れ恐れ、日夜狂奔疲 労して尚ほ願みざるの有様なれ。眞正の獸醫は連も民間に於て其伎倆を逞ふするの餘地を 視ず。何そ共効積を奏するの日あらんや。然れとも全國を挙けて皆此の如して云ふにあらす。近来岩手、秋田には縣立獸醫学校あり。山形、仙台、石川、福岡、熊本其他の數縣には獸醫学校或は講習所等の設ありて、眞正の獸醫を聘し盛んに獸醫の生徒を教育せり。是に於てか獸醫の需要稍々端緒を開けり。然るに全國の廣き獸畜の多き僅かに二三獸醫の其所を得 たりとて満足すべきにあらず。宜しく益々眞正の獸醫をして普くひ真正の事業に就かしむ へきなり。政府も亦た早く茲に見るあり。明治十八年八月二十二日を以て雑録欄内に掲くる獸醫免許規則及ひ獸醫開業試験規則を発布せられたり。此規則の施行せらるゝに至らば従 来各地方に於て累世馬牛の治療を業するの輩は(現今獸醫の学術を講習する者を除き)勿論三稜鍼を放ち烙鐵を棄て、転業若くは破産するものなかるべしと雖とも、萬一舊来の獸 醫にして俄かに其進路の方向に迷惑するものある時は、気の毒の至りなれば政府も深く此 に顧慮せられ、規則の實行に一ヶ年の猶預を輿へ布告第五條を設けて以て當分従来の伯楽 或は馬醫をして、共営業を持續するの便を得せしめられたるものと信す。吾儕を以て之を視れば舊来の獸醫則ち伯楽は前に述ふるが如く、概ね病畜治療と蹄鬣修理を専業とするに眞 正の獸醫は唯々病畜の治療を為すのみならず、獸畜の衛生を説き、流行病傅染病の預防を講し、畜産の改良を謀り、屠獸屠肉販売乳の検査を行なひ、大小獸市の健全を監察し、其他人畜の間に於ける衛生上の関係を協議する等の重任あるを以て、彼の蹄髭修理の如きは眞正獸 醫の為すべき事にあらさるか如し。依て吾儕は蹄鬣修理の業を獸醫の範囲外に置かれん事 を希望す。若し蹄鬣修理の事を以て馬醫専業の一部とせらるゝは、譬は従来近隣の薬舗に於て診察を受け並に賈薬を服したるに、今や其診察を廃せられて西洋醫師の開業を免許せら ると同時に、公浴堂と結髪を一緒に失ひたるが如く、獸畜の為め不便なるべしと思ふ。吾儕 は此の如き職業を方今都府に行はるゝ蹄鐵工の部類に属し、別に蹄鐵工営業規則或は取締 規則等を設けられ以て之を統轄せられん事を希望すべし。果して此の如くなれば従来の伯 楽も尚ほ其営業の一部たる蹄鬣修理を営為するを得べく、又た眞正の獸醫も主ら獸醫たる べきの本分を守り強て他の賤業を兼ぬるに及ばざるべし。偶々獸醫免許規則を発布せらる に會し、聊か思ふ処を陳ふる事爾り。明治十八年大日本獸醫會誌第一號の発兌に臨み聊か感ずる所あり。左の小言を記し以て今回の責を塞がんとす。
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更新日時:2006/08/21
08:06 ]
原 玄與先生著 喫狗傷考
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14:17 ]
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原 玄與先生著 喫狗傷考 江都書舗 青藜閣発行
序
原子柔の黄岐の道に於ける、其れ心を用ひざる所無けん耶。■■遣らず、以て常に有らざるに及ぶ。常に有らざる者、弁博及ばざるに非ず。亦或は希に之に及ぶと雖も、未だ以て之を心に経ざるなり。則ち當に希有にして用ひること無かるべし。
夫れ■狗の毒は、水火より猛なり。而して常に有らず。有れば則ち一日二日にして一を以て萬に至る。如し苟も触れば則ち人之に死す、水火に似たるを有す歟。火は以て撲滅すべく、水は以て雍ぐべく、以て決する可なり。■狗の毒は撲滅雍決の術なし。弁博亦希に及べば則ち薬石も竟にその治を失うなり。
予の幼時、一日人来りて云く、某地に■狗ありと。明日又人来りて云く、某里に■狗有り、戒む可しと。一日二日にして一を以て萬に至る。邑里州県、処として有らざるなし。然り、常に有らざれば則ち希に及ぶもの亦希なるが故に、治又治を得ず。乃ち死者何ぞ限らん。爾来殆んど五十年。又常に有らず、弁博又希に及ぶと雖も今又かくの如く有り。
予の幼時、嘗て見る所則ち至る。所謂其れ水火より猛なり。子柔、希に有る■狗を以て治其の治を得ず。故に之を諸書より募閲し、希に及べば則ち集む。竟に巻と為し、人をして其の所に及ばしめんと欲するも逮ばず。予業に己に面視し、一を以て萬に至る。特に子柔心を用ふるの深きを嘆ず。年の後を我より先んずる者、一たび之を見れば則ち皆能く之を識る。子柔其れ勤めよや哉。
安永辛丑仲春 淡園 埼 允明 序 印 印
■狗傷考を刻するに叙す。
吾が友子柔の業たる、三世其の美を済す。生死骨肉、治を請うて市の如し。門人笈を負いて、諄々誘掖し、数を守ること精明、論着籍を成す。或は帳秘を問い、先づ此の筴を授く。毒の身に逼る何ぞ疾急がざらん。■狗人を囓む。其の毒深く入る。一に治療を失せば鍼縊死及び難し。犬と医と交も害を為す。是れ其の論の以て立つ所、先に急に後に緩し。行して将に習う所を伝えんとし、■狗傷考を刻す。
天明三年癸卯冬 水戸 立原 萬 印
■狗傷考
目次
論 第一
治法第二
薬法第三
灸法第四
刺法第五
禁忌第六
治験第七
附録 毒蛇諸虫咬
鼠 咬
■狗傷考 叢桂亭随筆之一
水藩医官 原 昌克 子柔 甫 著
論 第一
夫れ虫獣の人を咬害するもの多し。虎狼蛇蝎の害の若きは、深山幽谷、絶人の地、人稀にに遇ふ所にして其の禍に罹るもの、亦た甚だ多からず。独り風犬の人を害するや、都鄙市朝を問はず。其の毒に触るもの比比相属す。若し夫れ理療一失すれば、則ち其の毒膏肓に入る。或は偶々■る者も亦た生冷油■を誤食すれば、則ち旧毒再発、口渇引飲し、妄語狂騒、狗叫の如し。其の証奇怪、名状すべからず。故に之を治するの法、必ず先ず躯内の毒を刈除するを以て要と為す。其の術、予め論定せざるにはあるべからず。夫れ風犬の行るや四五月の際尤も甚しと為す。城郭県鎮、烟火相臨の地、狂狗人を咬む有れば、則ち子弟悪少、相引て之を撲殺す。寒郷陋巷の若き、一犬横行、毒を数人に流す。又、常狗之と闘えば伝染して癲狗となる。是に於て禍に罹る者、亦た少からず。理療一失せば医と犬と、交ゝ害を相為すもの虎狼より甚だし。要するに須く其の方法を照して、宿毒の遺患無かるべし。
左氏伝に云く、国人■狗を逐と云う。即ち風犬なり。或は■犬、癲狗、風狗、狂犬等の称、皆な同義なり。
千金論に曰く、凡そ春末夏初、犬多く狂を発す。必ず小弱を誡め、杖を持して以て予め之を防ぐ。防ぎて免れざるもの、灸するに出るは莫し。百日の中、一日も闕けざるもの、方に難を免るることを得。若し初め瘡■へ、痛定るを見て即ち平復と言ふ者、是れ最も畏るべし。大禍即ち至る。死旦夕に在り。昌克按ずるに信なるかな此の言。多くは枯薬を以て傷処に貼し、瘡乾痂脱するを看て、■て全痾と為す者、速なるは旦夕、遅きは旬月、終わりに鬼簿を免れざるに至る。
聖済総録に曰く、■犬齧ば犬狂疾を発し、■躁人を齧む。若し之れに中れば、人をして疼痛止まざらしむ。発狂犬聲の如し。急に之を治せざれば、亦た能く人を殺す。男子三日を過ぐれば治せず。婦人五日を過ぐれば治せずと。昌克按ずるに、犬毒の男女を以て理療の遅速を論ずるは蓋し妄誕也。
胡■曰く、風狗咬傷は此れ乃ち九死に一生の病と。急ぎ斑蟄七枚を用て、糯米を以て炒り黄にし、米を去り末と為し、酒一盞を半盞に煎し空心温服して下を取る。小肉狗三四十枚を盡ると為す。数少きが如きは、数日再服すること七次。狗形無れば永く再発せざる也。累に試み累に験ありと。
孫一奎曰く、斑猫七枚を用て頭足翅を去り、糯米少許を以て、新尾上に於て同じく炒り、米黄香を以て度となす。米を去て用いず。斑猫を以て研り砕き、好酒調へ下す。能く酒を飲む人は再び一盃を進む。傷の上下を看て服す。當日必ず毒物有り。小便に従つて出づ。小狗の状の如し。未だ下らざる者の如きは、次日再進す。如し又下らざれば又之を進む。毒物出るを以て度と為す。進て七服に至る。毒下らずと雖も亦害無し。薬を服するの後、腹中必ず安からず。小便茎中刺痛す。必ず慮からず。此毒薬の為に攻られて将に下らんとするのみ。痛甚しきもの、蕪青一匙を以て甘草湯を煎じ送下す。即ち止む。蕪青無きが如きは青黛亦可なり。疾癒て後、急に香白■五銭、雄黄二銭半を以て末と為し、韮根を搗き、自然汁を湯酒に調へ下す。斑猫の毒を去り、水を以て浄漱し、口に青葱白を嚼み傷処に■す。小■を留め毒気を出す。他草薬を用て■すべからず。
又曰く、急に治せざれば小狗を生ず。必ず人を殺す。雄黄、蝉脱を等分に末と為し調へ、傷処に敷く。立ところに癒ゆ。
医方大成に云く、大斑■三七枚を用て頭足翅を去り、糯米一勺を用て■ゝ炒り過し、別に七枚を以て前の如く炊り、色変せば復た之を去り、別に七枚を以て前の如く青烟に至るを度と為す。■を去り、只米を以て粉と為し、冷水を用て清油少許を入れ、空心に調服す。須臾に再進一服す。小便毒物を利下するを以て度と為す。如し利せざれば再進す。利後肚痛せば急ぎ冷水を用て青■を調へ之を服す。以て其の毒を解す。否なれば則ち傷有り。黄連水も亦之を解すべし。但し宜く一切の熱物を服すべからず。
李中梓曰く、斑猫は■犬の悪物を下すと。
張■曰く、斑猫七枚を以て翅足を去り、炙り黄にし、■■と同じく搗き汁にし之を服す。瘡口を風無き処に於て悪血を■去り、小便にて洗浄し、髪灰之を敷く。服後小便當に■毒有て泄出すべし。三四日後、當に肉狗形有るべし。三四十枚を尽と為す。数少きが如きは再び七枚を服す。若し早く服せば、狗形無しと雖も永く発せずと。
■廷賢曰く、斑猫翅足を去り七■、香附七■、共に細末と為し一服と作す。焼酎を調へ下す。腹痛忍ぶべからざるが如きは、猪肉湯一両口して吃して之を解すれば、即ち止む。一時ならずして小便出ず。狗形下り来る。即ち巳む。鑼鼓風を避ること十七日なり。
又曰く、斑猫七箇を用て翅足を去り末と為し、酒に調へ服す。小便桶内に於て、衣沫狗形に似たるものを見ば効と為す。無きが如きは再び服す。須く六七次なるべし。狗形無きも亦再発せず。甚だ効あり。
呉珠曰く、風狗の咬傷は急に斑猫七箇を用て末と為し、温酒に調へ服す。其の毒小便中より去る。特に尿缸に清水を盛せんとし、患人をして其中に尿せ令むべし。半日を停め、濁気凝結し狗形の如きを見ば則ち去る。狗形を見ざる如きは、須く七次服すべきこと。方に可なり。狗形無れば乃ち再発せず。極めて験あり。若し小便渋れば、益元散を水に調へ服す。最も妙なり。
陳実功曰く、之を治すること遅きものは、毒大にして小便出で難し。必ず臓府を攻め、久ければ形をなす。
昌克按ずるに、千金方の九漏を治する方中に、斑猫地■を用ゆ。其の方後に曰く、病小便より出づ。尿盆中に相視る。虫の形状有るが如し。又、膠汁に似たり。此れ病の出づるなり。此の他、古人瘰癧血疝等の病、斑蟄を用ゆるもの皆曰く、毒小便より出づと。或は粉片の如く、或は血塊の如く、或は爛肉の如し。皆其の験なり。但し毒の行く、小便必ず渋痛す。當るべからず。則ち李果破毒飲輩を以て之を道く。是れ斑猫を用るの常例にして、袖珍方に■犬傷を治する、蝦蟆を搗き爛し水服する者も亦小便内に沫を見るの事を言ふが如きに至る。
張氏医通に曰く、■■一二枚を以て搗き汁し生食す。小便桶内に沫を見る。其の毒即ち解く。蓋し是れ犬毒に由て其の験を説くものなり。而して小便の穢物を利する、果して此の如きものの、余は未だ目に之を見ず。其の他風犬を治する方薬に斑猫を用ゆるもの、往々奇効を奏す。衆薬と同じからず。最も犬毒を攻るの良品なり。
袖珍方に云く、先づ頂心に於て血髪三四根を抜き去ると。陳実攻曰く、其の人頂心に必ず血髪一両根有り、宜く抜去すべしと。孫一奎曰く、頂上紅髪を抜き去ると。呉珠曰く、患人の頂心中に於て一紅髪有り、即ち當に抜き去るべし。後薬を服し快効すと。張■曰く、先づ患人の頭上に於て、血髪二三茎を抜き去ると。廷賢曰く、宜く番木鼈を水に磨して吃すべしと。即ち脳頂上を看よ、紅頭髪有り、急に摘去ると。馮■張曰く、胎髪焼て性を存し新香附と野菊を研細し、酒を調へ服す。酔を尽す。患人の頭を看よ、紅髪三根有り、速に抜き去れと。
昌克按ずるに、近ごろ野呂元丈も亦た此の説有り。余嘗て之を索む。未だ其の謂ふ所の紅髪なるものを見ず。
小品方に云く、■■膾を生食する、絶て良しと。張■曰く、■■一二枚を以て搗汁を服すと。肘後方に云く、■犬傷を治すに七日毎に一発す。■■膾を食して、断て良しと。亦、之を炙食すべし。本人をして之を知らしむること勿れ。自後再び発せず。袖珍方に云く、風犬傷を治すに即ち■■の後足を搗爛し、水に調へ之を服すと。
昌克按ずるに、李中梓も亦■■の條下に於て、■犬の効を説く。又、況約か宋書に載す。張収(或は作牧)■犬の為に傷せらる。人の云、宜く蝦蟆膾を■ふべし。之を食て遂に愈ゆ、実に一奇良方なりと。野呂元丈も亦た蝦蟆膾の説有りて■■の事に及ばず。■■は是れ■■。■■は是れ癩■■。是れ通説なり。而して又、毒蛇咬を療すに、急に癩蝦蟆を取り、搗き爛し上に敷き、之を帛縛するの方有り。諸書載する所の蝦蟆の如き、蓋し是れ癩蝦蟆なり。
李時珍曰く、古人■を通称して蝦蟆と為すのみ。今二物を攷するに、功用亦た甚だ遠からず。則ち古人用ふる所の多くは是れ蝦蟆。且つ近人亦た■■を用て効有り。而して蝦蟆は復た薬に入れず。
又、鄭堡■通志に云く、蝦蟆の類多し。■■を以て上と為す。曰く■、曰く去甫、曰く若螫と。昔張鴨が弟、収、■犬の為に傷せらる。医の云く、宜く蝦蟆膾を食すべし。収甚だ之を難ず。鴨笑を含みて先づ嘗む。蓋し此の物、但し薬用に入る。食ふべきに非ず。爾雅に、■は■、一種あり、田中に生ず。大なるもの三四枚、重さ一斤、南人名けて水鶏と為す。又、蛤と名づく。又、一種山谷中に生ず。黒色肉紅、石鱗魚と名づく。並に食すべし。其の小なるもの■と名づく。其の■より大にして青色なるものを青■と曰ふ。凡そ蝦蟆の類は皆交合せず。惟此れ雌雄相対し、沫を吐き漸ゝ魚子と成る。遂に変して科斗と成る。爾雅に云く、科斗を活東亦は活師と曰ふ。古人科斗の書、蓋し象を此に取る。
昌克、頃ろ久慈郡に遊び慈雲寺を訪ふ。語次犬毒の事に及ぶ。上人告て曰く、郡中其の患に遇ふ者、乃ち■膾を作り之を食ふ。遂に危篤に至る者無しと。因て知る、此の物、善く毒を治する。必ず蝦蟆■■の分に有らず。多用を妙と為す。諸書に載する所の如き、尤も以て信ずるに足る。
上人又曰く、蝦蟆を■ふ後に、その頭上に物を発して癩■■状の如きもの有りと。一奇事なり。月余を経れば則ち脱去すと。
或は語て曰く、人有り■犬の為に咬まる。急に赤豆、麻物、油膩、一切の毒物を取て煮食す。終に再発の患無し。癒て後油膩を忌まず経日の者の如きは、此の法宜しからず甚だ害を為すと。昌克未だ信ぜず。而して世俗此の法を用て毎々効を取る。数々験有る者を見る。因て知る毒毒を攻ると。斑猫を用る者と一般、蓋し経日の者斑猫を与へば、則ち相害する此の法と同きか。余、未だ其の當否を知らざるなり。姑く記て後考に備ふ。
医宗金鑑に云く、豆■を用ひ研末し、香油調稠し、丸弾子大の如くす。常に■る処を開拭し、■開て■丸を看る。内に若し狗毛茸茸然たる有れば、此れ毒気巳に出るに係る。丸を易へ再び揩て茸毛無きに至りて方に止む。甚だ効と。余、未だ試みざれども恐くは妄誕なり。
治方 第二
千金論に云く、凡そ狂犬人を咬む。著訖れば即ち人をして狂せしむ。精神己に別る。何を以て知ることを得る、但し灸時を看よ。一度火下れば、即ち心中醒然惺惺了了を覚ゆ。方に咬れて己に即狂するを知る。是れ以て深く須く之を知るべし。此の病至て重し。世皆之を軽んず。以て意と為さず。是に坐して死するもの常に年ゝ之れ有り。
吾初めて医を学ぶ。未だ以て業と為さず。人有り是れに遭ふ。将に以て吾に問はる。了に報答を知らず。是を以て吾手を経て、而して死する者一ならず。此に自り鋭意に之を覚ぶ。一解巳来、治する者皆癒ゆ。方に知る世に良医無く枉死する者半云云。
昌克謂らく、風犬の一毒、原是れ外来の病。死生を以て焉を論ずべからざるものに似たり。然り治療一たび失せば則ち必死に至る。起すべからざるときは、則ち膏肓難癒の病と何ぞ擇ばん。犬と医と交ゝ相害す。懼れざるべけんや。是れ思■が沈思留心する所以なり。
凡そ狂犬人を咬むもの、須く急に黄金漿を与ふべし。若し吐する者更に之を与ふ。且つ須く熱人尿を用て傷口を洗去るもの一再次なるべし。此時傷口上に於て、宜く之を細視すべし。當に薄膜の如くなるもの有り。是れ狗牙根の垢査なり。謹て留むべからず。速に之を洗ひ去る。流血脉脉として断へざるものを妙と為す。若し血流涌せざるもの、方に鋒針を将て之を刺破し、血出れば紫金丹を与ふ。血止めば傷口を拭去す。仍て艾火を上すこと法の如し。而して白玉湯紫金丹を送下す。毒甚しきは即服す。
傷口未だ愈ず、発汗禁ぜず、亡陽する者は救い難し。宜く先づ足の委中を刺して血を出すべし。而して黄金漿両三合を与ふ。紫禁丹を主る。服後寸効無き者は死す。
医、誤理し、或は飲食節を失し、旧毒再発する者は治し難し。
傷口痊を報し、五六十日若くは百余日、其の人悪風口渇、睾丸内吊し、二溲閉結し、行歩動作呼吸乃迫するもの将に痙を発せんとせば、宜く急に之を理すべし。紫円を与えて之を取る。(其の毒の緩急と其の人の少長を量て剤を作る)二三日、若くは四五日、巳に痙を発し、口禁咬牙、角弓反張、口涎沫を吐し、舌縮り聲枯れ、眼昏み神無く、水飲下らざる者は死す。
将に痙を発せんとする者、急に當に二溲を利すべし。而して手の尺中、足の委中を刺す。玉散之を主る。紫金丹も亦之を主る。
小品方に云く、衆療差へず、毒人を攻め、煩乱■し、巳に犬臀を作す者、方に髑髏骨を焼き灰にし末し、東流水を以て方寸匕を和服す。以て活し止む。昌克按ずるに、此方甚だ奇験あり。即ち下に載する所の白壁散、是れなり。
赤水玄珠云く、経久宿毒、復た発する者多くは救い難し。薬療す可きもの無し。雄香散之を主る。(本救良方に出ず)若し牙関禁急、肯て服せざる者は則ち鼻を撚りて之を潅ぐ。服薬の後、必ず驚起すること勿れ。其の自醒するに任す。再び前薬を進め、然して死を免る者僅かに千百中の一二のみ。
薬方 第三
黄金漿方
生薑根(撞き汁を取る) 鉄漿
右二味各等分、毎服一合。冷服す。
紫金丹方(即王■百一選方。大乙紫金丹。一名萬病解毒丸。一名玉枢丹)
山茲姑(皮を去り洗。二両) 川五倍子(洗 二両) 麝香(三銭)
千金子仁(白者。研。紙に圧て油を去。一両) 大戟 (紅芽者。芦を去。一両半)
右五味、重羅勺せしむ。糯米■飲を用い之を和し、木臼杵千杵、一銭一錠に作し、病甚き者は連服す。(湯火傷、毒蛇悪犬、一切の虫傷、並に冷水に和し磨塗す。仍て之を服す。百一選方に詳なり。
青玉散方 ■犬人を咬むを理す。
青黛 雄黄
右二味等分末と為す。毎服五分。桃根白皮の煎汁を送下す。日二夜一。白玉湯も亦得たり。
白玉湯方 ■犬人を咬むを理す。
杏仁(三銭) 桃根白皮(二銭)
右二味、水二合を以て、煮て一合を取る。日に二剤。別に杏仁、葱白、倶に杵き泥と成し、瘡口に敷く。灸すること数十壮。口をして合せざらしむ。甚だ妙なり。
白璧散方 旧毒再発し、狂躁悶乱する者を理す。
天霊蓋
右一味、研り末と為し水服す。
雄香散方(救急良方の方)
雄黄(五銭) 麝香(二銭)
右二味研り勺し、酒にて下す、二服に作す。
蝦蟆膾法
蝦蟆切て両股を取り、皮を去り洗浄し、膾に作す。柚橘芳芽の類、其の宜きに適す。或は炙食する者、効少し。冬月の如きは、乾蝦蟆煎服す。多を以て妙と為す。其の効大いに劣る。
小品方に云く、若し重発する者、■蜍膾を生食する、絶て良し。亦た之を焼き食すべし。必ず其の人をして初て知しめず、囓を得て便此と為す。即ち発らず。
古籍用ひる所の薬品、頗る多し。其の散して諸書に在るものを抄して、以て考策に備ふ。
内治
■蜍 蝦蟆 葛根
斑螯 雄黄 青布汁
頭髪 野菊 桃根白皮
麝香 狼牙 蝟頭灰 水服
故梳 韮根と同く煎服。又韮汁服す 桔梗
狼牙草灰 狼肉 天霊蓋
黒丑 梹榔 木鼈子
番木鼈 鉄華粉 乳香
千金子仁 蔓菁 杵汁
序
原子柔の黄岐の道に於ける、其れ心を用ひざる所無けん耶。■■遣らず、以て常に有らざるに及ぶ。常に有らざる者、弁博及ばざるに非ず。亦或は希に之に及ぶと雖も、未だ以て之を心に経ざるなり。則ち當に希有にして用ひること無かるべし。
夫れ■狗の毒は、水火より猛なり。而して常に有らず。有れば則ち一日二日にして一を以て萬に至る。如し苟も触れば則ち人之に死す、水火に似たるを有す歟。火は以て撲滅すべく、水は以て雍ぐべく、以て決する可なり。■狗の毒は撲滅雍決の術なし。弁博亦希に及べば則ち薬石も竟にその治を失うなり。
予の幼時、一日人来りて云く、某地に■狗ありと。明日又人来りて云く、某里に■狗有り、戒む可しと。一日二日にして一を以て萬に至る。邑里州県、処として有らざるなし。然り、常に有らざれば則ち希に及ぶもの亦希なるが故に、治又治を得ず。乃ち死者何ぞ限らん。爾来殆んど五十年。又常に有らず、弁博又希に及ぶと雖も今又かくの如く有り。
予の幼時、嘗て見る所則ち至る。所謂其れ水火より猛なり。子柔、希に有る■狗を以て治其の治を得ず。故に之を諸書より募閲し、希に及べば則ち集む。竟に巻と為し、人をして其の所に及ばしめんと欲するも逮ばず。予業に己に面視し、一を以て萬に至る。特に子柔心を用ふるの深きを嘆ず。年の後を我より先んずる者、一たび之を見れば則ち皆能く之を識る。子柔其れ勤めよや哉。
安永辛丑仲春 淡園 埼 允明 序 印 印
■狗傷考を刻するに叙す。
吾が友子柔の業たる、三世其の美を済す。生死骨肉、治を請うて市の如し。門人笈を負いて、諄々誘掖し、数を守ること精明、論着籍を成す。或は帳秘を問い、先づ此の筴を授く。毒の身に逼る何ぞ疾急がざらん。■狗人を囓む。其の毒深く入る。一に治療を失せば鍼縊死及び難し。犬と医と交も害を為す。是れ其の論の以て立つ所、先に急に後に緩し。行して将に習う所を伝えんとし、■狗傷考を刻す。
天明三年癸卯冬 水戸 立原 萬 印
■狗傷考
目次
論 第一
治法第二
薬法第三
灸法第四
刺法第五
禁忌第六
治験第七
附録 毒蛇諸虫咬
鼠 咬
■狗傷考 叢桂亭随筆之一
水藩医官 原 昌克 子柔 甫 著
論 第一
夫れ虫獣の人を咬害するもの多し。虎狼蛇蝎の害の若きは、深山幽谷、絶人の地、人稀にに遇ふ所にして其の禍に罹るもの、亦た甚だ多からず。独り風犬の人を害するや、都鄙市朝を問はず。其の毒に触るもの比比相属す。若し夫れ理療一失すれば、則ち其の毒膏肓に入る。或は偶々■る者も亦た生冷油■を誤食すれば、則ち旧毒再発、口渇引飲し、妄語狂騒、狗叫の如し。其の証奇怪、名状すべからず。故に之を治するの法、必ず先ず躯内の毒を刈除するを以て要と為す。其の術、予め論定せざるにはあるべからず。夫れ風犬の行るや四五月の際尤も甚しと為す。城郭県鎮、烟火相臨の地、狂狗人を咬む有れば、則ち子弟悪少、相引て之を撲殺す。寒郷陋巷の若き、一犬横行、毒を数人に流す。又、常狗之と闘えば伝染して癲狗となる。是に於て禍に罹る者、亦た少からず。理療一失せば医と犬と、交ゝ害を相為すもの虎狼より甚だし。要するに須く其の方法を照して、宿毒の遺患無かるべし。
左氏伝に云く、国人■狗を逐と云う。即ち風犬なり。或は■犬、癲狗、風狗、狂犬等の称、皆な同義なり。
千金論に曰く、凡そ春末夏初、犬多く狂を発す。必ず小弱を誡め、杖を持して以て予め之を防ぐ。防ぎて免れざるもの、灸するに出るは莫し。百日の中、一日も闕けざるもの、方に難を免るることを得。若し初め瘡■へ、痛定るを見て即ち平復と言ふ者、是れ最も畏るべし。大禍即ち至る。死旦夕に在り。昌克按ずるに信なるかな此の言。多くは枯薬を以て傷処に貼し、瘡乾痂脱するを看て、■て全痾と為す者、速なるは旦夕、遅きは旬月、終わりに鬼簿を免れざるに至る。
聖済総録に曰く、■犬齧ば犬狂疾を発し、■躁人を齧む。若し之れに中れば、人をして疼痛止まざらしむ。発狂犬聲の如し。急に之を治せざれば、亦た能く人を殺す。男子三日を過ぐれば治せず。婦人五日を過ぐれば治せずと。昌克按ずるに、犬毒の男女を以て理療の遅速を論ずるは蓋し妄誕也。
胡■曰く、風狗咬傷は此れ乃ち九死に一生の病と。急ぎ斑蟄七枚を用て、糯米を以て炒り黄にし、米を去り末と為し、酒一盞を半盞に煎し空心温服して下を取る。小肉狗三四十枚を盡ると為す。数少きが如きは、数日再服すること七次。狗形無れば永く再発せざる也。累に試み累に験ありと。
孫一奎曰く、斑猫七枚を用て頭足翅を去り、糯米少許を以て、新尾上に於て同じく炒り、米黄香を以て度となす。米を去て用いず。斑猫を以て研り砕き、好酒調へ下す。能く酒を飲む人は再び一盃を進む。傷の上下を看て服す。當日必ず毒物有り。小便に従つて出づ。小狗の状の如し。未だ下らざる者の如きは、次日再進す。如し又下らざれば又之を進む。毒物出るを以て度と為す。進て七服に至る。毒下らずと雖も亦害無し。薬を服するの後、腹中必ず安からず。小便茎中刺痛す。必ず慮からず。此毒薬の為に攻られて将に下らんとするのみ。痛甚しきもの、蕪青一匙を以て甘草湯を煎じ送下す。即ち止む。蕪青無きが如きは青黛亦可なり。疾癒て後、急に香白■五銭、雄黄二銭半を以て末と為し、韮根を搗き、自然汁を湯酒に調へ下す。斑猫の毒を去り、水を以て浄漱し、口に青葱白を嚼み傷処に■す。小■を留め毒気を出す。他草薬を用て■すべからず。
又曰く、急に治せざれば小狗を生ず。必ず人を殺す。雄黄、蝉脱を等分に末と為し調へ、傷処に敷く。立ところに癒ゆ。
医方大成に云く、大斑■三七枚を用て頭足翅を去り、糯米一勺を用て■ゝ炒り過し、別に七枚を以て前の如く炊り、色変せば復た之を去り、別に七枚を以て前の如く青烟に至るを度と為す。■を去り、只米を以て粉と為し、冷水を用て清油少許を入れ、空心に調服す。須臾に再進一服す。小便毒物を利下するを以て度と為す。如し利せざれば再進す。利後肚痛せば急ぎ冷水を用て青■を調へ之を服す。以て其の毒を解す。否なれば則ち傷有り。黄連水も亦之を解すべし。但し宜く一切の熱物を服すべからず。
李中梓曰く、斑猫は■犬の悪物を下すと。
張■曰く、斑猫七枚を以て翅足を去り、炙り黄にし、■■と同じく搗き汁にし之を服す。瘡口を風無き処に於て悪血を■去り、小便にて洗浄し、髪灰之を敷く。服後小便當に■毒有て泄出すべし。三四日後、當に肉狗形有るべし。三四十枚を尽と為す。数少きが如きは再び七枚を服す。若し早く服せば、狗形無しと雖も永く発せずと。
■廷賢曰く、斑猫翅足を去り七■、香附七■、共に細末と為し一服と作す。焼酎を調へ下す。腹痛忍ぶべからざるが如きは、猪肉湯一両口して吃して之を解すれば、即ち止む。一時ならずして小便出ず。狗形下り来る。即ち巳む。鑼鼓風を避ること十七日なり。
又曰く、斑猫七箇を用て翅足を去り末と為し、酒に調へ服す。小便桶内に於て、衣沫狗形に似たるものを見ば効と為す。無きが如きは再び服す。須く六七次なるべし。狗形無きも亦再発せず。甚だ効あり。
呉珠曰く、風狗の咬傷は急に斑猫七箇を用て末と為し、温酒に調へ服す。其の毒小便中より去る。特に尿缸に清水を盛せんとし、患人をして其中に尿せ令むべし。半日を停め、濁気凝結し狗形の如きを見ば則ち去る。狗形を見ざる如きは、須く七次服すべきこと。方に可なり。狗形無れば乃ち再発せず。極めて験あり。若し小便渋れば、益元散を水に調へ服す。最も妙なり。
陳実功曰く、之を治すること遅きものは、毒大にして小便出で難し。必ず臓府を攻め、久ければ形をなす。
昌克按ずるに、千金方の九漏を治する方中に、斑猫地■を用ゆ。其の方後に曰く、病小便より出づ。尿盆中に相視る。虫の形状有るが如し。又、膠汁に似たり。此れ病の出づるなり。此の他、古人瘰癧血疝等の病、斑蟄を用ゆるもの皆曰く、毒小便より出づと。或は粉片の如く、或は血塊の如く、或は爛肉の如し。皆其の験なり。但し毒の行く、小便必ず渋痛す。當るべからず。則ち李果破毒飲輩を以て之を道く。是れ斑猫を用るの常例にして、袖珍方に■犬傷を治する、蝦蟆を搗き爛し水服する者も亦小便内に沫を見るの事を言ふが如きに至る。
張氏医通に曰く、■■一二枚を以て搗き汁し生食す。小便桶内に沫を見る。其の毒即ち解く。蓋し是れ犬毒に由て其の験を説くものなり。而して小便の穢物を利する、果して此の如きものの、余は未だ目に之を見ず。其の他風犬を治する方薬に斑猫を用ゆるもの、往々奇効を奏す。衆薬と同じからず。最も犬毒を攻るの良品なり。
袖珍方に云く、先づ頂心に於て血髪三四根を抜き去ると。陳実攻曰く、其の人頂心に必ず血髪一両根有り、宜く抜去すべしと。孫一奎曰く、頂上紅髪を抜き去ると。呉珠曰く、患人の頂心中に於て一紅髪有り、即ち當に抜き去るべし。後薬を服し快効すと。張■曰く、先づ患人の頭上に於て、血髪二三茎を抜き去ると。廷賢曰く、宜く番木鼈を水に磨して吃すべしと。即ち脳頂上を看よ、紅頭髪有り、急に摘去ると。馮■張曰く、胎髪焼て性を存し新香附と野菊を研細し、酒を調へ服す。酔を尽す。患人の頭を看よ、紅髪三根有り、速に抜き去れと。
昌克按ずるに、近ごろ野呂元丈も亦た此の説有り。余嘗て之を索む。未だ其の謂ふ所の紅髪なるものを見ず。
小品方に云く、■■膾を生食する、絶て良しと。張■曰く、■■一二枚を以て搗汁を服すと。肘後方に云く、■犬傷を治すに七日毎に一発す。■■膾を食して、断て良しと。亦、之を炙食すべし。本人をして之を知らしむること勿れ。自後再び発せず。袖珍方に云く、風犬傷を治すに即ち■■の後足を搗爛し、水に調へ之を服すと。
昌克按ずるに、李中梓も亦■■の條下に於て、■犬の効を説く。又、況約か宋書に載す。張収(或は作牧)■犬の為に傷せらる。人の云、宜く蝦蟆膾を■ふべし。之を食て遂に愈ゆ、実に一奇良方なりと。野呂元丈も亦た蝦蟆膾の説有りて■■の事に及ばず。■■は是れ■■。■■は是れ癩■■。是れ通説なり。而して又、毒蛇咬を療すに、急に癩蝦蟆を取り、搗き爛し上に敷き、之を帛縛するの方有り。諸書載する所の蝦蟆の如き、蓋し是れ癩蝦蟆なり。
李時珍曰く、古人■を通称して蝦蟆と為すのみ。今二物を攷するに、功用亦た甚だ遠からず。則ち古人用ふる所の多くは是れ蝦蟆。且つ近人亦た■■を用て効有り。而して蝦蟆は復た薬に入れず。
又、鄭堡■通志に云く、蝦蟆の類多し。■■を以て上と為す。曰く■、曰く去甫、曰く若螫と。昔張鴨が弟、収、■犬の為に傷せらる。医の云く、宜く蝦蟆膾を食すべし。収甚だ之を難ず。鴨笑を含みて先づ嘗む。蓋し此の物、但し薬用に入る。食ふべきに非ず。爾雅に、■は■、一種あり、田中に生ず。大なるもの三四枚、重さ一斤、南人名けて水鶏と為す。又、蛤と名づく。又、一種山谷中に生ず。黒色肉紅、石鱗魚と名づく。並に食すべし。其の小なるもの■と名づく。其の■より大にして青色なるものを青■と曰ふ。凡そ蝦蟆の類は皆交合せず。惟此れ雌雄相対し、沫を吐き漸ゝ魚子と成る。遂に変して科斗と成る。爾雅に云く、科斗を活東亦は活師と曰ふ。古人科斗の書、蓋し象を此に取る。
昌克、頃ろ久慈郡に遊び慈雲寺を訪ふ。語次犬毒の事に及ぶ。上人告て曰く、郡中其の患に遇ふ者、乃ち■膾を作り之を食ふ。遂に危篤に至る者無しと。因て知る、此の物、善く毒を治する。必ず蝦蟆■■の分に有らず。多用を妙と為す。諸書に載する所の如き、尤も以て信ずるに足る。
上人又曰く、蝦蟆を■ふ後に、その頭上に物を発して癩■■状の如きもの有りと。一奇事なり。月余を経れば則ち脱去すと。
或は語て曰く、人有り■犬の為に咬まる。急に赤豆、麻物、油膩、一切の毒物を取て煮食す。終に再発の患無し。癒て後油膩を忌まず経日の者の如きは、此の法宜しからず甚だ害を為すと。昌克未だ信ぜず。而して世俗此の法を用て毎々効を取る。数々験有る者を見る。因て知る毒毒を攻ると。斑猫を用る者と一般、蓋し経日の者斑猫を与へば、則ち相害する此の法と同きか。余、未だ其の當否を知らざるなり。姑く記て後考に備ふ。
医宗金鑑に云く、豆■を用ひ研末し、香油調稠し、丸弾子大の如くす。常に■る処を開拭し、■開て■丸を看る。内に若し狗毛茸茸然たる有れば、此れ毒気巳に出るに係る。丸を易へ再び揩て茸毛無きに至りて方に止む。甚だ効と。余、未だ試みざれども恐くは妄誕なり。
治方 第二
千金論に云く、凡そ狂犬人を咬む。著訖れば即ち人をして狂せしむ。精神己に別る。何を以て知ることを得る、但し灸時を看よ。一度火下れば、即ち心中醒然惺惺了了を覚ゆ。方に咬れて己に即狂するを知る。是れ以て深く須く之を知るべし。此の病至て重し。世皆之を軽んず。以て意と為さず。是に坐して死するもの常に年ゝ之れ有り。
吾初めて医を学ぶ。未だ以て業と為さず。人有り是れに遭ふ。将に以て吾に問はる。了に報答を知らず。是を以て吾手を経て、而して死する者一ならず。此に自り鋭意に之を覚ぶ。一解巳来、治する者皆癒ゆ。方に知る世に良医無く枉死する者半云云。
昌克謂らく、風犬の一毒、原是れ外来の病。死生を以て焉を論ずべからざるものに似たり。然り治療一たび失せば則ち必死に至る。起すべからざるときは、則ち膏肓難癒の病と何ぞ擇ばん。犬と医と交ゝ相害す。懼れざるべけんや。是れ思■が沈思留心する所以なり。
凡そ狂犬人を咬むもの、須く急に黄金漿を与ふべし。若し吐する者更に之を与ふ。且つ須く熱人尿を用て傷口を洗去るもの一再次なるべし。此時傷口上に於て、宜く之を細視すべし。當に薄膜の如くなるもの有り。是れ狗牙根の垢査なり。謹て留むべからず。速に之を洗ひ去る。流血脉脉として断へざるものを妙と為す。若し血流涌せざるもの、方に鋒針を将て之を刺破し、血出れば紫金丹を与ふ。血止めば傷口を拭去す。仍て艾火を上すこと法の如し。而して白玉湯紫金丹を送下す。毒甚しきは即服す。
傷口未だ愈ず、発汗禁ぜず、亡陽する者は救い難し。宜く先づ足の委中を刺して血を出すべし。而して黄金漿両三合を与ふ。紫禁丹を主る。服後寸効無き者は死す。
医、誤理し、或は飲食節を失し、旧毒再発する者は治し難し。
傷口痊を報し、五六十日若くは百余日、其の人悪風口渇、睾丸内吊し、二溲閉結し、行歩動作呼吸乃迫するもの将に痙を発せんとせば、宜く急に之を理すべし。紫円を与えて之を取る。(其の毒の緩急と其の人の少長を量て剤を作る)二三日、若くは四五日、巳に痙を発し、口禁咬牙、角弓反張、口涎沫を吐し、舌縮り聲枯れ、眼昏み神無く、水飲下らざる者は死す。
将に痙を発せんとする者、急に當に二溲を利すべし。而して手の尺中、足の委中を刺す。玉散之を主る。紫金丹も亦之を主る。
小品方に云く、衆療差へず、毒人を攻め、煩乱■し、巳に犬臀を作す者、方に髑髏骨を焼き灰にし末し、東流水を以て方寸匕を和服す。以て活し止む。昌克按ずるに、此方甚だ奇験あり。即ち下に載する所の白壁散、是れなり。
赤水玄珠云く、経久宿毒、復た発する者多くは救い難し。薬療す可きもの無し。雄香散之を主る。(本救良方に出ず)若し牙関禁急、肯て服せざる者は則ち鼻を撚りて之を潅ぐ。服薬の後、必ず驚起すること勿れ。其の自醒するに任す。再び前薬を進め、然して死を免る者僅かに千百中の一二のみ。
薬方 第三
黄金漿方
生薑根(撞き汁を取る) 鉄漿
右二味各等分、毎服一合。冷服す。
紫金丹方(即王■百一選方。大乙紫金丹。一名萬病解毒丸。一名玉枢丹)
山茲姑(皮を去り洗。二両) 川五倍子(洗 二両) 麝香(三銭)
千金子仁(白者。研。紙に圧て油を去。一両) 大戟 (紅芽者。芦を去。一両半)
右五味、重羅勺せしむ。糯米■飲を用い之を和し、木臼杵千杵、一銭一錠に作し、病甚き者は連服す。(湯火傷、毒蛇悪犬、一切の虫傷、並に冷水に和し磨塗す。仍て之を服す。百一選方に詳なり。
青玉散方 ■犬人を咬むを理す。
青黛 雄黄
右二味等分末と為す。毎服五分。桃根白皮の煎汁を送下す。日二夜一。白玉湯も亦得たり。
白玉湯方 ■犬人を咬むを理す。
杏仁(三銭) 桃根白皮(二銭)
右二味、水二合を以て、煮て一合を取る。日に二剤。別に杏仁、葱白、倶に杵き泥と成し、瘡口に敷く。灸すること数十壮。口をして合せざらしむ。甚だ妙なり。
白璧散方 旧毒再発し、狂躁悶乱する者を理す。
天霊蓋
右一味、研り末と為し水服す。
雄香散方(救急良方の方)
雄黄(五銭) 麝香(二銭)
右二味研り勺し、酒にて下す、二服に作す。
蝦蟆膾法
蝦蟆切て両股を取り、皮を去り洗浄し、膾に作す。柚橘芳芽の類、其の宜きに適す。或は炙食する者、効少し。冬月の如きは、乾蝦蟆煎服す。多を以て妙と為す。其の効大いに劣る。
小品方に云く、若し重発する者、■蜍膾を生食する、絶て良し。亦た之を焼き食すべし。必ず其の人をして初て知しめず、囓を得て便此と為す。即ち発らず。
古籍用ひる所の薬品、頗る多し。其の散して諸書に在るものを抄して、以て考策に備ふ。
内治
■蜍 蝦蟆 葛根
斑螯 雄黄 青布汁
頭髪 野菊 桃根白皮
麝香 狼牙 蝟頭灰 水服
故梳 韮根と同く煎服。又韮汁服す 桔梗
狼牙草灰 狼肉 天霊蓋
黒丑 梹榔 木鼈子
番木鼈 鉄華粉 乳香
千金子仁 蔓菁 杵汁
[
更新日時:2006/08/16
14:19 ]
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山口県獣医会会則
2006/07/27のBlog
[
07:15 ]
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山口県獣医会会則 大正六年九月十九日認可
第一條 本会は山口県獣医会と称し事務所を山口県庁内に置く
第二條 本会の区域は山口県一円とし郡市の区域に依り支部を置く
第三條 本会は県内在住の獣医を以て組織す但し獣医にあらさるも本会の趣旨を翼賛する者は会員たることを得
会員を分ちて左の三種とす
一 通常会員 開業せる者
二 特別会員 開業せさる者
三 名誉会員 前項但書該当の者にして会長の推薦に係る者
第四條 本会は獣医畜産学を考究し実地の技能を錬磨し人畜衛生及畜産の発達に資し兼て会員相互の親睦を図るを以て目的とす
第五條 前條の目的を達する為左の事業を行ふものとす
一 講習会講話会の開設
二 会報の発刊
三 質疑応答
四 薬価其他料金の制定
第六條 本会に左の役員を置く但し総会の決議を経て別に顧問をおくことあるへし
一 会長一名 会長は本会一切の事務を総理す
二 副会長一名 副会長は会長を補佐し会長事故あるときは之を代理す
三 幹事五名 幹事は会長の指揮を承て庶務会計に従事す
四 評議員五名 評議員は会務に関する諸般の事項を審理す
五 支部長十二名 支部長は会長の指揮を承け支部一切の事務を整理す
第七條 役員は総て名誉職とし総会に於て之を選挙す但し支部長は会長の委嘱に依る
第八條 役員の任期は満二年とし再選を妨けす
第九條 役員に欠員を生したるときは次期の総会に於て補欠選挙を行うものとす但し其任期は前任者の残任期間とす
第十條 会長第三十二條但書の承諾を求めたる者あるときは役員に諮問して認否を決す
第十一條 会議を分ちて左の三種とす
一 通常総会
二 臨時総会
三 役員会
第十二條 通常総会は毎年一回之れを開き獣医畜産上に関する講演竝討議を為し且つ会務其他の報告、会則の改正役員の改選其他重要の事項を協定す臨時総会は会長に於て必要と認めたるとき又は通常会員三分の一以上の同意を経て請求ありたるとき之を開く役員会は会長に於て必要と認めたるとき之を開く
第十三條 会議の議決は多数決とす可否同数なるときは会長之を決す但し第五條第四号に関する事項の決議は通常会員出席者三分の二以上の同意に依り決するものとす
第十四條 会議の決議権を委任したる者は出席者と見做す
第十五條 通常会員及特別会員にして出席し能はさるときは決議権の委任者を定め開会前日迄に会長に届出つへし
第十六條 本県に在住し獣医免状を有する者は本会に加入する義務あるものとす但し己むを得さる事情に依り入会し能はさる者は知事の認可書を添へ会長に届出つへし
第十七條 本会に入会せむとする者は住所(郡市町村地番屋敷番原籍寄留の区別)官職職業氏名を記載し一ケ年分の会費を添へ本会事務所に申込むへし前項届出事項に変更を生したるときは其都度届出つるものとす
第十八條 会員は大正五年七月本県令第二十五号獣医蹄鉄工取締規則第一條第二條の届出を為すときは同時に之を会長に報告すへし
第十九條 会員にして第三條の資格に変更を来したるときは十日以内に会長に届出つへし第二十條 本会の会計年度は毎年八月一日に始り翌年七月三十一に終るものとす
第二十一條 本会の経費は会費及其他の収入を以て之に充つ
第二十二條 経費の予算は総会前役員会に於て之を編成し総会の決議を得るものとす経費の決算は役員会の審査を経総会に於て之を報告するものとす
第二十三條 本会左記各項の収入を以て基金を造成するものとす
一 指定寄付金
二 基金併預金の利子
三 其他総会の決議に依り定めたるもの基金は其利子を以て本会経費を支弁するに至る を限度とす
第二十四條 毎年度の経費決算上余剰を生したるときは之を翌年度に繰越すものとす
第二十五條 本会の基金及現金は郵便貯金に預入し置くものとす
第二十六條 基金は総会の決議を得るにあらされは之れを支出することを得す
第二十七條 会員は会費として一ケ年金五拾銭を拠出するものとす但し名誉会員は此の限りにあらす
第二十八條 会員は本会経費を負担する義務あるものとす
第二十九條 会員本県獣医蹄鉄工取締規則第五條の事項を知を事に報告するときは其旨会長に報告するものとす
第三十條 学術上参考となるへきもの若は病性不祥の患畜を発見したるときは原因症候療法若剖検記録等詳細なる報告書を本会に提出するものとす
第三十一條 畜主の招聘あるに際し前主治医のある場合は之れか紹介を要するものとす但し急速を要する場合は爾後に於て承諾を需むるも可なり
第三十二條 診断料薬価手術料滞在費及証明書料は本則の定むるところに依り之を徴収するものとす但し特別の事情ある地方にして所定の標準に拠り難き場合は会長の承認を受くへし
第三十三條 会員は左の事項を実行するものとす
一 公徳を重んし品性の修養を怠らさること
二 本県獣医蹄鉄工取締規則に違反せさること
三 本則を遵守し本会の目的の達成を図ること
第三十四條 本則に違反する者を発見したる会員は直に会長に通報するものとす
第三十五條 本会は第三十八條薬価其他料金表を調整し之を会員に配布す
第三十六條 会員は前條の料金表を開業場患畜主の見易き箇所に掲くへし料金表を毀損忘失したるときは直に之れか交付を本会事務所に請求すへし但し再交付を受けたるものは別に定むる手数料を納付するものとす
第三十七條 会員にして会則に違背し又は会員たるの対面を汚損したる者は役員会の決議に依り相当の処分を為すものとす
第三十八條 薬価其他料金の種類及金額を左の通定む但し往診料診断料診断書料証明書料及検案書料を特別の契約に依り徴収する者にありては該料金に限り此の規定に依らさることを得
診察料
一往診料壱里以内金壱円五十銭(一里を増す毎に五十銭を加ふ)
一滞在費壱日金弍円
一宅診料甲金壱円乙金五十銭
一死後診断料壱里以内金壱円五十銭(一里を増す毎に五十銭を加ふ)
一健康診断書証明書料金五十銭
一処方箋料金五十銭
一鑑定料金五十銭以上
薬価
一内服薬 一日量 金四十銭乃至六十銭
一頓服薬 一回量 金五十銭乃至壱円
一皮下注射薬 一回量 金三十五銭乃至壱円
一血清注射薬 一回量 金参円乃至五円
一点眼薬 十瓦に付金二十銭
一外用水剤 百瓦に付金十銭乃至二十銭
一擦剤 百瓦に付金四十銭
一膏薬 拾瓦に付金弍拾銭
一吸入薬 一日量 金参十銭以上
一潅腸 一回量 金参十銭以上
一撒布薬 五十瓦に付金参十銭
但し高価薬は此の限にあらす
外科手術料
一外科手術 金参拾銭乃至参円
一去勢料 馬 金弍円乃至五円 牛 金一円乃至弍円
但し犢は五十銭以上とす
一産科手術 金弍円乃至十円
診察料薬価及び手術料は総て現収するものとす
獣医蹄鉄工取締規則
第一條 獣医又は蹄鉄工開業シタルと気は開業年月日及開業地を出張所を設置したるときは設立年月日及其の位置併出張定日を五日以内に知事へ届出つへし其の届出事項に変更を生したるとき亦同じ
第二條 獣医又は蹄鉄工の免状を有するものにして開業獣医若くは蹄鉄工の代理者又は助手として業務に従事する者は従業地各被代理者又は雇主の氏名を五日以内に知事へ届出つへし其の届出事項に変更を生したるとき亦同じ
第三條 獣医又は蹄鉄工は何等の名義を以てするも免状を有せさる者をして其の業務を代理せしむることを得す
第四條 獣医は患畜の診断又は死畜の検案を為さすして薬剤処方書診断書検案書若しくは証明書を付与すへからす
第五條 獣医は獣疫予防法に規定せる獣疫以外の伝染病及流行病を診断し蔓延の徴ありと認めたるときは病名原因症候転帰及其の情況を直に知事に報告すへし
第六條 獣医は処方録及検案簿を備へニ箇年間之を保存すへし処方録には患畜の年令毛色特徴性用途病名処方投薬年月日経過併畜主の住所氏名を記入すへし
検案簿には死畜の年令毛色特徴性用途病名検案の概要斃死年月日併畜主の住所氏名を記入すへし
第七條 前条の帳簿は当該官吏の臨検を拒むことを得す
第八條 獣医は県の区域に依り蹄鉄工は一郡市以上の区域に依り獣医会又は蹄鉄工会を組織すへし
獣医会は郡市以上の区域に依り其の支会を蹄鉄工会は県の区域に依り其の連合会を組織することを得
前各項の場合に於ては左の各号に依り規約を設け知事の認可を受くへし其の之を変更したるとき亦同し
一、目的及業務の概目
二、名称区域及事務所位置
三、加入及脱退に関する規定
四、役員の選挙方法職務権限及其の任期に関する規定
五、会議に関する規定
六、経費の収支に関する規定
七、違約者処分に関する規定
八、其の他必要の事項
第一條 本会は山口県獣医会と称し事務所を山口県庁内に置く
第二條 本会の区域は山口県一円とし郡市の区域に依り支部を置く
第三條 本会は県内在住の獣医を以て組織す但し獣医にあらさるも本会の趣旨を翼賛する者は会員たることを得
会員を分ちて左の三種とす
一 通常会員 開業せる者
二 特別会員 開業せさる者
三 名誉会員 前項但書該当の者にして会長の推薦に係る者
第四條 本会は獣医畜産学を考究し実地の技能を錬磨し人畜衛生及畜産の発達に資し兼て会員相互の親睦を図るを以て目的とす
第五條 前條の目的を達する為左の事業を行ふものとす
一 講習会講話会の開設
二 会報の発刊
三 質疑応答
四 薬価其他料金の制定
第六條 本会に左の役員を置く但し総会の決議を経て別に顧問をおくことあるへし
一 会長一名 会長は本会一切の事務を総理す
二 副会長一名 副会長は会長を補佐し会長事故あるときは之を代理す
三 幹事五名 幹事は会長の指揮を承て庶務会計に従事す
四 評議員五名 評議員は会務に関する諸般の事項を審理す
五 支部長十二名 支部長は会長の指揮を承け支部一切の事務を整理す
第七條 役員は総て名誉職とし総会に於て之を選挙す但し支部長は会長の委嘱に依る
第八條 役員の任期は満二年とし再選を妨けす
第九條 役員に欠員を生したるときは次期の総会に於て補欠選挙を行うものとす但し其任期は前任者の残任期間とす
第十條 会長第三十二條但書の承諾を求めたる者あるときは役員に諮問して認否を決す
第十一條 会議を分ちて左の三種とす
一 通常総会
二 臨時総会
三 役員会
第十二條 通常総会は毎年一回之れを開き獣医畜産上に関する講演竝討議を為し且つ会務其他の報告、会則の改正役員の改選其他重要の事項を協定す臨時総会は会長に於て必要と認めたるとき又は通常会員三分の一以上の同意を経て請求ありたるとき之を開く役員会は会長に於て必要と認めたるとき之を開く
第十三條 会議の議決は多数決とす可否同数なるときは会長之を決す但し第五條第四号に関する事項の決議は通常会員出席者三分の二以上の同意に依り決するものとす
第十四條 会議の決議権を委任したる者は出席者と見做す
第十五條 通常会員及特別会員にして出席し能はさるときは決議権の委任者を定め開会前日迄に会長に届出つへし
第十六條 本県に在住し獣医免状を有する者は本会に加入する義務あるものとす但し己むを得さる事情に依り入会し能はさる者は知事の認可書を添へ会長に届出つへし
第十七條 本会に入会せむとする者は住所(郡市町村地番屋敷番原籍寄留の区別)官職職業氏名を記載し一ケ年分の会費を添へ本会事務所に申込むへし前項届出事項に変更を生したるときは其都度届出つるものとす
第十八條 会員は大正五年七月本県令第二十五号獣医蹄鉄工取締規則第一條第二條の届出を為すときは同時に之を会長に報告すへし
第十九條 会員にして第三條の資格に変更を来したるときは十日以内に会長に届出つへし第二十條 本会の会計年度は毎年八月一日に始り翌年七月三十一に終るものとす
第二十一條 本会の経費は会費及其他の収入を以て之に充つ
第二十二條 経費の予算は総会前役員会に於て之を編成し総会の決議を得るものとす経費の決算は役員会の審査を経総会に於て之を報告するものとす
第二十三條 本会左記各項の収入を以て基金を造成するものとす
一 指定寄付金
二 基金併預金の利子
三 其他総会の決議に依り定めたるもの基金は其利子を以て本会経費を支弁するに至る を限度とす
第二十四條 毎年度の経費決算上余剰を生したるときは之を翌年度に繰越すものとす
第二十五條 本会の基金及現金は郵便貯金に預入し置くものとす
第二十六條 基金は総会の決議を得るにあらされは之れを支出することを得す
第二十七條 会員は会費として一ケ年金五拾銭を拠出するものとす但し名誉会員は此の限りにあらす
第二十八條 会員は本会経費を負担する義務あるものとす
第二十九條 会員本県獣医蹄鉄工取締規則第五條の事項を知を事に報告するときは其旨会長に報告するものとす
第三十條 学術上参考となるへきもの若は病性不祥の患畜を発見したるときは原因症候療法若剖検記録等詳細なる報告書を本会に提出するものとす
第三十一條 畜主の招聘あるに際し前主治医のある場合は之れか紹介を要するものとす但し急速を要する場合は爾後に於て承諾を需むるも可なり
第三十二條 診断料薬価手術料滞在費及証明書料は本則の定むるところに依り之を徴収するものとす但し特別の事情ある地方にして所定の標準に拠り難き場合は会長の承認を受くへし
第三十三條 会員は左の事項を実行するものとす
一 公徳を重んし品性の修養を怠らさること
二 本県獣医蹄鉄工取締規則に違反せさること
三 本則を遵守し本会の目的の達成を図ること
第三十四條 本則に違反する者を発見したる会員は直に会長に通報するものとす
第三十五條 本会は第三十八條薬価其他料金表を調整し之を会員に配布す
第三十六條 会員は前條の料金表を開業場患畜主の見易き箇所に掲くへし料金表を毀損忘失したるときは直に之れか交付を本会事務所に請求すへし但し再交付を受けたるものは別に定むる手数料を納付するものとす
第三十七條 会員にして会則に違背し又は会員たるの対面を汚損したる者は役員会の決議に依り相当の処分を為すものとす
第三十八條 薬価其他料金の種類及金額を左の通定む但し往診料診断料診断書料証明書料及検案書料を特別の契約に依り徴収する者にありては該料金に限り此の規定に依らさることを得
診察料
一往診料壱里以内金壱円五十銭(一里を増す毎に五十銭を加ふ)
一滞在費壱日金弍円
一宅診料甲金壱円乙金五十銭
一死後診断料壱里以内金壱円五十銭(一里を増す毎に五十銭を加ふ)
一健康診断書証明書料金五十銭
一処方箋料金五十銭
一鑑定料金五十銭以上
薬価
一内服薬 一日量 金四十銭乃至六十銭
一頓服薬 一回量 金五十銭乃至壱円
一皮下注射薬 一回量 金三十五銭乃至壱円
一血清注射薬 一回量 金参円乃至五円
一点眼薬 十瓦に付金二十銭
一外用水剤 百瓦に付金十銭乃至二十銭
一擦剤 百瓦に付金四十銭
一膏薬 拾瓦に付金弍拾銭
一吸入薬 一日量 金参十銭以上
一潅腸 一回量 金参十銭以上
一撒布薬 五十瓦に付金参十銭
但し高価薬は此の限にあらす
外科手術料
一外科手術 金参拾銭乃至参円
一去勢料 馬 金弍円乃至五円 牛 金一円乃至弍円
但し犢は五十銭以上とす
一産科手術 金弍円乃至十円
診察料薬価及び手術料は総て現収するものとす
獣医蹄鉄工取締規則
第一條 獣医又は蹄鉄工開業シタルと気は開業年月日及開業地を出張所を設置したるときは設立年月日及其の位置併出張定日を五日以内に知事へ届出つへし其の届出事項に変更を生したるとき亦同じ
第二條 獣医又は蹄鉄工の免状を有するものにして開業獣医若くは蹄鉄工の代理者又は助手として業務に従事する者は従業地各被代理者又は雇主の氏名を五日以内に知事へ届出つへし其の届出事項に変更を生したるとき亦同じ
第三條 獣医又は蹄鉄工は何等の名義を以てするも免状を有せさる者をして其の業務を代理せしむることを得す
第四條 獣医は患畜の診断又は死畜の検案を為さすして薬剤処方書診断書検案書若しくは証明書を付与すへからす
第五條 獣医は獣疫予防法に規定せる獣疫以外の伝染病及流行病を診断し蔓延の徴ありと認めたるときは病名原因症候転帰及其の情況を直に知事に報告すへし
第六條 獣医は処方録及検案簿を備へニ箇年間之を保存すへし処方録には患畜の年令毛色特徴性用途病名処方投薬年月日経過併畜主の住所氏名を記入すへし
検案簿には死畜の年令毛色特徴性用途病名検案の概要斃死年月日併畜主の住所氏名を記入すへし
第七條 前条の帳簿は当該官吏の臨検を拒むことを得す
第八條 獣医は県の区域に依り蹄鉄工は一郡市以上の区域に依り獣医会又は蹄鉄工会を組織すへし
獣医会は郡市以上の区域に依り其の支会を蹄鉄工会は県の区域に依り其の連合会を組織することを得
前各項の場合に於ては左の各号に依り規約を設け知事の認可を受くへし其の之を変更したるとき亦同し
一、目的及業務の概目
二、名称区域及事務所位置
三、加入及脱退に関する規定
四、役員の選挙方法職務権限及其の任期に関する規定
五、会議に関する規定
六、経費の収支に関する規定
七、違約者処分に関する規定
八、其の他必要の事項
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