明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.

2012年11月11日日曜日

日本獣医学教育史の資料

日本獣医学教育史は昭和四十七年十二月一日発行.著者は篠永紫門.資料に江本修「日本獣医学発達史」と白井恒三郎「日本獣医学史」を掲げる.この二書はいずれも個人の著作で,根拠不明の太子流・橘猪弼と仲国流・肥後の硯山を採用している.太子流・橘猪弼の捏造者は元徳川幕府の馬医・菊池東水で,仲国流・肥後の硯山の捏造者も元徳川幕府馬医の深谷周三である.深谷周三は明治二十三年に仲国流伝説を捏造するが,昭和三年の「日本馬政史」では松平公らに化けの皮を剥がされたと見え,偽説はいずれも不採用となっている.

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