明治維新の頃,日本にはまだ獣医の制度はありません.この頃は馬の療治は武士の身分の「馬医」が行っていました.やがて,軍隊が洋式化され,革靴,羊毛服,牛肉缶詰が大量に必要となると,馬医は獣医と名称を変え,資格も国家試験免状となります.日本の獣医術や獣医学は主に軍馬の治療と軍人の食料(牛)・衣服(羊)のために発達しました.軍犬や軍鳩が研究の対象となるのは,ずっと後の事です.
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2010年5月13日木曜日
口蹄疫の防疫
現行の家畜伝染病予防法では,偶蹄類の口蹄疫はと殺の義務がある伝染病とされている.と殺の例外はけい留して検査する擬似患畜のみで,確定診断のついた家畜は家畜防疫員の指示に従いと殺し,死体を焼却又は埋却することと定められている.明治三十年の獣疫予防の心得では,口蹄疫は流行性鵞口瘡の名になっている.津野慶太郎「獣医警察学」では最も有力なる防疫方法は交通遮断としている.完全に交通遮断を行い,病畜を隔離できれば伝染が防げるが,旧法では英国と同様に,速やかに撲殺と交通遮断を行うべきとしている.家畜伝染病の発生時には交通を遮断して畜舎,糞尿その他の消毒を行うが,この際最も気を付けるべき事は,小鳥や昆虫,その他の小動物の駆除である.昨今の宮崎での発生例では,トラックに消毒薬を浴びせるシーンが何度か見られたが,牛舎に蝿が居ないかそちらの方が心配である.昔,満州国の時代に牛疫が発生した時の対処法は,防疫にあたる獣医は松明を片手に馬に乗り,牛舎に火を付けて回ったとある.誠に野蛮で残酷な方法だが,悪疫の流行を絶つには最高の方法と言える.
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